満足度★★★
2人1役
崩壊しかけていた家族が音楽を通して再生していく様を描いた作品で、ストーリーとしてはベタなホームドラマで新味はありませんでしたが、演劇ならではの手法を用いた演出が興味深かったです。
父、母、姉、弟の4人がそれぞれピアノ、チェロ、フルート、ヴァイオリンを弾く設定なのですが、変に弾き真似をしたりはしないで、演奏家が舞台上に登場して実際に演奏し、役者は演奏家の横に佇んでいたり、物語に即した歌詞で歌ったりする趣向が効果的で面白かったです。
家の中、屋外、店の中、音楽ホール等、様々な場所が出て来るのを敢えてそれと分かるような具体的な表現をせずに、椅子とワゴンの配置だけで示していたのもスマートで良かったです。
それだけに、クライマックスの場面で突然具体的な物と映像が出てきたのには違和感があり、残念に感じました(流れ的には感動する場面なのに客席から笑い声が上がっていました)。
音楽は楽器編成を変えて多少のカットをした以外は大幅な改編をしていないアレンジで、原曲を尊重していて良かったです。器楽曲に歌詞をつけて歌うのは、音域や音程の跳躍等が役者には負担が大き過ぎたみたいで、危なっかしい場面が所々にあったのが勿体なかったです。