満足度★★★★★
空間との対話
世田谷美術館のリオープン記念のパフォーマンスで、静謐で非常にゆったりした動きから、能の良い公演を観た時に感じられるような、まどろみと覚醒が同時に来る感覚が感じられました。
横長の窓を通して外の風景と繋がる扇型の空間を照明を用いず、外から入る柔らかな自然光だけで照らす中で約30分の間、日常とは異なる時間の流れが存在していました。
静かなアンビエントミュージックが微かに聞こえる中、客席後方から音を立てずに現れ、摺り足で空間をゆっくり移動し、時折腕を水平や上方に広げる動きがほとんどでしたが、表現に奥深い豊かさがあり、静止して踵を上げる動きや、少しだけ腰を落とす動きがとても印象的でした。
強く自身をアピールするのではなく、空気が凝固して人の形になったかのような存在の仕方が美しかったです。
室内が暗いためハレーション気味に見える窓の外で、花見客の人だかりや巨大なヒマラヤ杉、地面を群れて歩くムクドリ等の姿が無音で見えるのが、手前に見えるダンスとの対比で特別なものに見えて来て、不思議な体験でした。
パフォーマンス後のトークもダンスと同じような環境に対して威圧感のない、穏やかで丁寧な話し方・内容で魅力的でした。