満足度★★★
良くも悪くもオーソドックス
沢田研二さんのヒット曲『お嬢さんお手上げだ』にインスパイアされてマキノノゾミさんが書き下ろし、演出した、分かりやすいベタな作品でした。強引に笑わせよう・泣かせようとする嫌らしさを感じさせない、すっきりとした味わいで、思っていたよりも楽しめました。
スランプに陥り、友人達と酒や麻雀の毎日を送る中年の漫画家のところに、実の娘だと名乗る女性がやって来て、漫画家の心が次第に変わっていく、というハートウォーミングな展開の中に少しほろ苦さを感じさせる物語で、新鮮さや意外性はありませんでしたが、中年の役者達のちょっと力の抜けた感じの演技が楽しく、飽きることなく観ることが出来ました。
時代設定は昭和中頃のようでしたが、携帯電話が使われずダイヤル式電話が出てくることくらいしか時代を感じさせるネタがなく、もう少し時代を明確にする物や出来事が織り込んであっても良いと思いました。
漫画家を演じた沢田研二さんは全盛期(リアルタイムでは見ていませんが)とは大分体型が変わっていましたが、歌声は流石で演技も可愛らしさがあって魅力的でした、セルフパロディー的なシーンも自虐的な痛々しさがなく、余裕が感じられて面白かったです。
他の3人の男性役者もくどくならない程度に個性的でした。唯一の女性キャストのさん朝倉みかんさんはチャーミングな演技が素敵したが、第1幕最後のアカペラの曲で完全に音を外してしまっていて残念でした。
バンドネオン、チェロ、パーカッションによる生演奏は控え目ながらも安定感のあるノリの良い演奏で楽しめました。