牡丹灯籠 公演情報 sunday「牡丹灯籠」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    舞台美術と役者の真剣勝負
    メイシアタープロデュースShow劇場 メイシアター×sunday 「牡丹灯籠」を観劇。

    個人的に劇場プロデュース公演のお手本にしている企画です。
    20回を数える「近松劇場」シリーズを終え、劇団や役者を固定せず、様々なジャンルの作品をプロデュースしている企画。何より役者やスタッフを変え、毎年プロデュース公演を開催するということがどれほど困難か?同じ劇場運営に携わる者として本当に頭が下がります。

    今回の原作は落語。そして舞台美術は演劇畑からではなく空間デザインを手がける重鎮・野井成正さん。



    客席に入り誰もがその美術にまず驚かされる。フライヤーそのままの舞台美術。間口4間、奥行き3間、高さ3mほどの舞台に大量に吊り下がる竹。床面からは約50cmほどしか空いておらず、座っても顔の前に竹がある。竹と竹の間は人一人が通れる隙間はあるものの、竹に当たらず芝居をするのは困難。これに18名の男女が右往左往する。危険極まりない舞台。


    私が演出なら間違いなく芝居をつくることを断念してしまうだろう。


    それをウォーリー木下は難なく舞台化。いや、難は多々あったと思う。一歩間違えば大怪我しかねない空間。相当の期間、試行錯誤をしたに違いない。

    ネタバレBOX

    吊下がった竹は自由に動き、役者の動きに合わせて揺れ動く。これが照明と音楽の効果で見事に空間が入れ替わる。時に立派なお屋敷になったり、時にあばら家になり、時に遊郭になり、時にうっそうと茂る竹林になったり、時に墓地になる。さらに、竹が触れ合う音も心地いい。ゆっくり揺れる竹の音。激しく揺れる竹の音。この小空間でこの竹の数だからこそできる妙。


    この芝居にこの竹がなかったらどうなんだろうとふと考えてみた。
    牡丹灯籠という複雑に入り組んだ悲喜劇落語。ウォーリー木下の舞台空間を掌握した演出。ベテランから若手まで実力派が揃った役者陣。物語にマッチしたindigo jam unitの現代音楽。そして百戦錬磨のスタッフ陣。これだけで十分評価に値する作品に仕上がっただろう。しかし、これらすべてに挑戦状を叩きつけたようなこの舞台美術があってこそ、この牡丹灯籠という作品がより奥深い作品へと変貌したように思う。

    舞台上で1歩歩くだけでも神経を研ぎ澄まさなければいけない舞台が作品の時代背景、緊迫感や静寂感を産み出しているように思う。

    難を言えば、目の前の竹が視界を遮るため、少し目が疲れる。

    あと、SEで入れていた青笹の擦れる音も生音で表現して欲しかったけど、これは言い過ぎ?

    0

    2012/03/09 13:35

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大