Turning Point 【分岐点】 公演情報 KAKUTA「Turning Point 【分岐点】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    時代を縫いあげた2本の糸
    冒頭から終幕のシーンまで
    縫い目のように現れるキャラクタから
    過ごした時間の肌触りが導き出されて・・・。

    それぞれの作り手が切り取る
    シーンの一コマずつに惹かれつつ
    終演時には
    過ごしてきた時代の束ねられた感覚が
    ふくよかなボリューム感とともに
    置かれていました。

    ネタバレBOX

    当日パンフレットにはキャストとともに
    それぞれの現わす年代が記されていて、
    そこには、その時代の空気を満たす
    描き方の確かさがあって。

    冒頭のシーンのどこか無軌道な二人の女性、
    彼女たちがその距離感のままに
    訪れる時間たちに縫い込まれていく。

    冒頭とラストのシーンが同じ作家で
    冒頭のキャラクターを2本の糸として両端を見る側に提示する役回り、
    そして二人の作家がその糸を縫い込みつつ
    同じ場所に、時間の変遷を仕立てていく。

    個々の物語に冒頭の女性たちが
    主人公になっているわけではない。
    むしろ、脇を固めるようなロールであったりもするのですが、
    彼女たちそれぞれが、
    どのようにそのシーン、
    もっといえばシーンが具象する時代に刺さり
    縫い目を作っていく姿がしっかりと残る。

    無軌道で若気の至りのような1997年を起点に
    どこかルーズで退廃を感じさせる色の中に
    登場人物たちが抱く若さや生真面目さを感じさせる1999年、
    穏やかでどこか教条的な雰囲気のなかに
    どこかポップでシニカルで人間臭い嘘がはびこるような2006年、
    さらに時代が行きついて、それでも歩みを止めることのない2011年、
    そして、最後にたどりついた今、2012年
    3人の演出家が紡ぎあげる
    5~6年を隔てた時代それぞれの時代に
    エピソードや切り取られた時代の面白さたちが満ちて、
    自然に取り込まれているうちに
    描かれた物語にシーンへの
    齢を重ねていく二人の女性の刺さり方や
    縫い筋の重なり方が
    自然に残る。

    糸だけを引き出してみれば
    波乱万丈とも思える彼女たちなのですが、
    それぞれの時代のなかに
    彼女たちのありようの必然があるから
    再びラストのパートで彼女たちを見つめるとき
    二人の生き方も、腐れ縁のような関係も
    日々を重ね人生を過ごすとてもナチュラルな質感として
    観る側に積もっていく。

    描かれた時代の匂いを自らの風景として体験している
    ある世代以上の人間(たとえば私)にとっては
    彼女たちの歩んできた感覚に
    記憶のベースの部分として揺らされる部分もあり、
    そこからも、キャラクターたちがたどった
    道程への感慨が満ちてくる。

    KAKUTAにとどまらず
    桑原さんの関わる作品には
    観終わった後の独特で他に類のない
    満たされ方があって。
    それはこの人の純作演の作品にとどまらず
    「グラデーションの夜」のような彼女の演出であっても
    「往転」のような、彼女の脚本であってもそうなのですが、
    日々を生きることの積み重ねで歩んできた距離と
    その先に視線を上げての一歩の感覚が
    色をそれぞれにしつつ、
    しなやかにまっすぐ降りてくる。
    しかも、作品ごとに
    一期一会のような生きる肌触りの精緻な描写を裏打ちする
    作り手の作劇の新しさが
    抽象的でも先鋭的な作品ではなく、
    むしろオーソドックな具象に満ちているにもかかわらず
    観る者を澱ませない。

    今回についても
    複数作家と演出家によって編まれた
    時代のリアリティに繋ぎこまれた
    2つの人生の歩みと交差の姿に
    すっかり取り込まれてしまいました。

    0

    2012/03/04 11:05

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大