Ceremony2012-おひさまのほうから- 公演情報 ストアハウスカンパニー「Ceremony2012-おひさまのほうから-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    花ひらく抽象性
    同じパフォーマンスでもやる時期によって、こんなにも印象の変わる作品もないだろう。初演は確か2007年だったと記憶している。今回の上演は、この作品の持つ豊かな抽象性が花ひらいた。それは作品が変わったからではなく、現実が変わったからだ。

    ネタバレBOX

    舞台中央には、様々な色彩の衣服が堆く積まれている。男女8人のパフォーマーたちが、ひたすら歩き続ける。衣装の山にも足を踏み入れ、あたかも地ならしをするがごとく歩んでいく。その結果、山は均され、舞台全面にまるで瓦礫のような様相で拡がる。初演の時は、これを見て瓦礫だと思う人は恐らくいなかったはずだ。しかし、今やこれを見る観客たちは尽くあの東北沿岸の街に拡がる瓦礫を想起するだろう。そのなかを必死に歩きゆく役者たちは、ときに二人組みになり、互いを支えながら、あるいは担ぎながら行進する。この姿を見て、命がけで避難する被災者たちの姿を思った人も多いだろう。
    だが、この作品が真に優れているのは、すべて観客の想像力に働きかけてくるところにある。それが、豊かな抽象性と思うところだ。
    だが残念なのは、初演では衣装の中を転がり続けるパフォーマーたちが、気づいたら身につけていた衣服がすべて剥ぎ取られ、全裸になっていたはずだが、今回は全員下着をつけていたところだ。しかも、かなり生活臭を感じる下着もあり、その時点でこの作品の演者たちの無名性が失われてしまった。さらに、そのあとの場面で、落ちている衣装を身に着けていくという行動の劇性が薄れてしまった。
    後半、役者たちが発する言葉も、それぞれの日常的なキャラクターをイメージさせてしまうものがあり、作品の硬質性を削いでいるきらいがあった。
    しかし、多少の難点はあるにしても、2007年にはじめて作られたこの作品が、観客たちに震災の幻影を見せつけたことは間違いない。しかも、他の表現媒体ではありえない斬新な方法において。そのような舞台の底力を感じさせてくれる上演だった。

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    2012/02/25 19:49

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