熱の華 公演情報 セカイアジ「熱の華」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    とてもセンスの良い2軸の設定
    役者はがんばっていたと思うのだが、人物の描写と関係にあとひと味あれば…。

    ネタバレBOX

    インドから持ってきて育てた「植物」、組織のリーダーと刑事を巡る「女」、その植物と女2つが、かかわる者を虜にし、正気を失わせていく、という2軸の対比と重なり合いはとてもうまいと思うし、面白い。

    しかし、植物のほうは、幻覚を見せるという具体的な誘因があるものの、生きていとたきも、死んだ後も2人の男を幻惑させる、なんていうとても素晴らしい設定の女性のほうには、そういう誘因のようなものが見えてこない。

    なぜならば、女性を巡る2人の男、堀川と安倍刑事それぞれと女性・葛葉の関係があまり見えてこないからだ。

    堀川と葛葉は同窓ということぐらいだし、安倍はたぶん葛葉の監視を続けていく中で、「虜」になったのだろう。
    そうは思えるのだが、「どう虜になっていったのか」がイマイチ見えてこないのだ。

    堀川はすでにそういう関係だが、そこまでの経緯のようなものが欲しかったし、安倍に至っては、いきなりそんな雰囲気になっていたように見えてしまった。
    安倍が葛葉と会うたびに、あるいは合わない時間も思いを馳せている、ということを匂わせるエピソードや台詞、あるいは雰囲気が是非欲しいところだ。

    特に安倍に関して言えば、安易な笑いのためかどうかはわからないが、若い刑事を諫めるときに、まるで漫才のツッコミのように頭を叩いくというシーンがあったのだが、これはどうだろう。
    安倍のキャラクター、つまり葛葉との関係を中心に据えるのならば、あのリアクションはなかったように思えるのだ。
    安倍と若い刑事との関係を見せるのならば、もっと別の諫め方もあっただろうし、別の方法で彼らの関係を見せる方法もあったはずだ。
    もっと言えば、安倍と若い刑事の関係で、安倍と葛葉の関係が深まっていっていることを、もう少しきちんと見せることだってできたはずだと思うのだ。

    せっかくの「植物」と「女」の2軸が気が利いているのだが、そのあたりが残念である。

    また、一番気になったのは、組織のリーダーである、堀川の存在だ。
    組織のリーダーとして、メンバーが付き従っているという「カリスマ性」が見えないのだ。
    風貌や台詞回しが芝居がかっていたりして、確かにそうしようとしているのだが、芝居がかった台詞回しの芝居をしているにしか見えないのだ。
    つまり、台詞も動きもぎこちなく、探り探りやっているようで、大切な「目」も普通すぎるからだ。

    彼が舞台に登場するまで、他の登場人物が延々彼のハードルを上げていただけに、この肩すかし感は否めない。

    逆にこんな、わざとらしいエキセントリックな男の設定にしていないほうが、無理なく人物を描けたのではないだろうか。
    つまり、「普通に見えていて、どこか変」というほうが、「植物」と「女」に侵食されていく男を描けたのではないかと思うのだ。

    植物に侵食されていく建物というイメージと、虜になっていく研究者や男たち、というイメージの重ね方はうまいのだから、もう少し人の造形をなんとかできたのならば、かなり面白い作品になったのではないだろうか。

    ラスト、あの植物の花を咲かしてもよかったのではないか。「植物」と「女」のイメージを合体させるような。
    例えば、葛葉の死体の上に咲いていた、というような設定で、舞台の上にもイメージとしての花を咲かせるとか、そんな感じに。

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    2012/02/21 14:00

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