愛はタンパク質で育ってる 公演情報 ぬいぐるみハンター「愛はタンパク質で育ってる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    突き抜けた!
    大衆の自意識や人間模様をカラフルなタッチでキッチュに描くぬいぐるみハンターの魅力が惜しみなく発揮されたエポックメイキングともベストアルバムとも言えるような作品。伝説に残るといっても過言ではないだろう。団体としても突き抜けた印象を持った。
    ぬいぐるみハンターは恐るべき速度で洗練され、進化しつづけている。

    ネタバレBOX

    冒頭、オリンピックの入場行進のような、マスゲーム。フォーメーションで統制されたダンスチューンにはじまり、各々の「選手(ランナー)」が物語の「スタート地点」を目指して走る。その道すがらで巻き起こるアクシデントやドラマをマラソン中継のハイライトのような趣きでピンポイント(点描的)に活写する。

    「疾走感」と「高揚感(グルーヴ感)」、その応答手段としての「焦燥感」は作品の大きなファクターとなっており、その質感が、これぞぬいぐるみハンターの真骨頂!!とでも言うような「いかにも」個性的なキャラクター勢の持つ「可愛らしさ」や「コミカルさ」によって大胆に描かれる。そこでは非現実的な存在であるからこそ許されるファニーな物言いやギャグめいたフリーダムな振る舞いは大きな見所となり、お気に入りのキャラクターを見つけたりコレクションしたり「推しメン」に挙げたりする楽しさがある。また、劇中で引用される寓話や映画やテレビ等の元ネタをみつける嬉しさもある。

    それぞれのキャラクターが単なる「ノリ」で登場していないところもまた憎い。
    彼/彼女らは、走ること・歩くこと・旅をすることに根拠を、意味を見つけようとする。そしてその意味や根拠、行為そのものを「人生」というスパンに置き換えて、生きることへの価値観に見直しをはかろうとする。その根源的な苦悩や葛藤、迷いや戸惑い、挫折が、劇場空間いっぱいに張り巡らされた四叉路の「人生の岐路」で問答される。

    そして終盤、これらのすべては、とある一組のカップルの母体に宿る遺伝子の「胎内の記憶」と「カルマの清算」、「煩悩」と「雑念」の「声」が産まれるまでの道のりであり、輪廻転生であり、人類の英知(ポップカルチャー)を辿るアドベンチャーであり、「誕生(物語のはじまり)」を目指す旅路でもあったということが明かされる。
    (「種あかし」と生命の「種子」、「種子」が「誕生」と「喜び」の「芽」となる、というのも、なかなか洒落が利いていた。)

    生きることへの辛さや絶望感が犇めく昨今において、生まれたことへの喜びを実感するのは容易いことではないだろう。それをあえて「バカバカ」しくて「コミカル」な狂騒で武装して超えていこうとする強さ。その勇気とメッセージに心を打たれたのだった。

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    2012/02/14 23:44

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