満足度★★
演劇についての演劇
「人間」を展示すると題して、展覧会のように観客が自由に動きながら観る、演劇という表現形式について考えさせる作品でした。
4方の壁や天井から吊り下げられた紐に「彼女」の様々なデータが記されている劇場の一画にカーテンとロールスクリーンで囲われた四畳半程度のエリアがあり、その中で「彼女」が2月3日の朝から夜までを何度も繰り返し演じ、次第に周囲でリアルでない要素が発生し、複数のシークエンスが同時に演じられたり、「彼女」が他の役者に入れ替わったりして、虚構性を強調する展開でした。
演劇における虚構性や、見る/見られるの関係性といった要素をただ提示しているだけで、そこから先の生の舞台ならではの質感の表現が不足していて、頭でっかちで行儀の良いメタ演劇に感じられました。
現代美術の世界でもノンフィクションに見せかけたフィクションを提示するスタイルがありますが、絵や写真や物の展示に比べて演劇では人がその場で演じることによる虚構性の表現の可能性があるのにそれを活かしきれていないと思いました。
中途半端にキャッチーな要素がありましたが、もっとポップな方向に持って行くか、あるいはそれらを排除して観客がイライラするくらいストイックで退屈な構成にした方が、狙いがはっきり浮かび上がると思いました。
役者が演じていることよりも、普段見られることに慣れていないために見られていることを意識せずに振る舞う観客の姿や、それを他の観客が見ていることを更に他の観客が見ているという入れ子状の関係性が興味深かったです。