満足度★★
時間、幸福の相対性
ある男の決断する/しないについての話が途中までは断片的なシーンの連なりで描かれ、終盤に向けて1つに収束する構成で、時間や幸福というものが相対的であることを通して、生き方について考えさせる作品でした。
登場人物の名前が明示されないまま進行し、その理由が最後に明らかになるという、小説では表現しにくい話になっていて演劇作品として作った意義が感じられましたが、話の流れでなんとなく分かることを終盤に全部言葉で説明することによって演劇ならではの表現力が失われていたのが残念でした。また、登場人物の関係や時系列の関係が必要以上に話を複雑にしているように感じました。
自己啓発的、あるいは宗教的なポジティブな台詞が多く、単純にそのようなメッセージを訴えているのではなく、相対的に扱っているのは理解できるのですが、個人的には全然共感できず、乗れませんでした。
1段上がった回り舞台、宙に吊された額縁、ベッドや椅子など全てに木の年輪が描かれていて時間という要素が視覚化されていたのが良かったです。回り舞台は回転軸が偏芯していて、角度によって客席との距離が変化して空間に遠近感を与えていて効果的でした。
過度に盛り上げたりしない、サティやラヴェルの静かな雰囲気のピアノ曲中心の選曲は良かったのですが、音楽の多用や大袈裟な感じの効果音、また役者の声の大きさのバランス等といった音のデザイン面があまり上手く行ってないように感じました。