満足度★
阿弖流為の叫びは聞こえるか
なぜか、わらび座には縁があって、いろいろなツテで観劇する機会が多いのだが、興味深い題材に惹かれ、意欲的な舞台作りに感心はしても、心の底から満足できる舞台に出会ったことは一度もない。
それは、俳優たちの演技が古臭く単調な(キャラクターの描き分けができておらず、みんな同質の芝居をする)せいかと思っていたのだが、『アテルイ』を観ると、そもそも原作を咀嚼する能力(即ち「モノガタリの魅力とは何か」を読み取る力)自体、わらび座には欠けているのではないかという疑念が湧いてきた。
映画に比べて、時間と空間の制約が大きい演劇は、逆にその制約を利用して、いかに観客のイメージを増大させるか、「無から有をいかに生み出させるか」が成功の鍵となる。しかしともすれば舞台は「あれもできない、これもできない」という「引き算の法則」でイメージを貧困化させることになってしまう。
結局、この舞台は、長大な原作を消化しきれず、ぶつ切りのダイジェストに収めることになってしまった。歴史のロマンも、まつろわぬ民たちの魂の叫びも、英雄アテルイの勇気も感じられない。今はただ「私はここで何を観たのだろうか」という寒々しい思いだけが胸に去来しているのである。