十一ぴきのネコ 公演情報 こまつ座「十一ぴきのネコ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    絵本の思い出と、今回得た感傷と。
    十一ぴきのネコは、馬場のぼるさんの「11ぴきのねこ」を下敷にした井上さん戯曲ですが、絵本の骨格を残しつつ、格段の面白さと昭和の薫りと、健全な毒を盛り込んだもの。
    私は、現在大学生の息子が保育園児だったときの思い出あり。保育園の運動会で11ぴきのねこをテーマに演じみんなネコのお面を付けて「みんなで力を合わせれば、おおきなさかなも取れるんだ」っ引いてました・当然、そんなほのぼのとしたお芝居ではなく結末もダークで、もし子どもをつれてきたらなんて答えればよいんだろう、と悩みながらの帰途でした。

    ネタバレBOX

    ♪じゅういっぴきのネコ、じゅういっぴきのネコがたびにでた
    おなかぺこぺこ 鼻はひこひこ 丘をとことこ みずうみどこどこ・・・♪
    (メロディがこびりついて頭を離れません)

    語呂合わせ語呂合わせ。
    擬態語、擬音語使いまくり。井上さんの言葉の遣いって面白いなあ。

    擬音語は、歌でなくてもたくさん出てくるのですが、せっかく音楽演奏者に荻野清子さんが舞台下手にいらっしゃるのに、ひゅー、さやさや(風)、どっかーん(ぶつかる音)、ぱたん(倒れる音)。役者さんのボイスパーカッション?、も使いまくり。子どもたちこういうところで結構笑っています。
    おじさん役者12人がときにハモりながら歌って歌って、踊って踊って(お決まりのラインダンスも)、マイムでせっせと示しながら「鯉の姿煮」の作り方を演技して、と。たくさん動いて、たくさんネコ問答。これなら小学生でも飽きないで見ていられますね。
    主役のにゃん太郎(北村有起哉)は「天晴れ指導者のにゃん太郎」と紹介されており、実際物語の進行はにゃん太郎のリーダーシップの元に進んでいくのですが、取っ掛かりからいえばにゃん太郎はよそ者なんですよね。十匹の仲間集団の方が先にいる。
    十匹集団の取りまとめ役は中村まことさん演じる「穏健温和仏のにゃん次」です。そこらへんがラストのビターさにつながるかも。え、日本人のムラ社会とか?
    山内圭哉さん演じるにゃん十一はもう一人の主役ともいえそう。
    十匹集団の中になんとなくいたはずなんだけど、実際は徹底的なアウトロー。にゃん十一は「ねこばばのにゃん十一」と紹介されていて、もともと泥棒に買われていた猫だったんです。ねこばば」って、絵本作家の馬場さんへの敬意をひそかに込めていませんかね。
    野良ネコ共和国を作ったあと、政府の要職はにゃん次たち9匹に牛耳られ、リーダーだったにゃん太郎は暗殺。にゃん太郎が死んだあと、にゃん十一はにゃん太郎に布をかけ、あの♪十一匹のネコが旅に出た♪を一人で歌います。幕。

    もし私が子ども連れてきて、子どもから「何でにゃん太郎くんは殺されちゃったの?にゃん太郎くんは悪くないよね」って聞かれたら、なんて答えたらよいのでしょう。
    昭和の時代背景とか、日本人の偏狭さとかそういうことは大人の領域であって、
    ○貧困はとっても苦しい
     成長のために努力するのは幸せだ、でも成長後の繁栄社会に陰があることがある
    ○国家というのは自分たちの自由を守るために作られているもののはずが、時には個人に対して暴力的になるんだ

    こどもに、君にはにゃん太郎の生き方でも、にゃん十一の生き方でもいい。
    そういう生き方は厳しいんだ。
    でもあまり世間(にゃん次からにゃん十)に流されてほしくはないな。
    って感じで伝えようかな、と考えつつ、本当は子どもたちにまずは感想を聞きたいなと思いました。
    こういうことは、確かに未就学児童には無理ですが、小学生くらいの子どもであれば、このお芝居を観てすぐ完全に理解できなくても、確かに触れさせてあげてもいいはずの毒だなあ

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    2012/01/31 10:00

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