新年工場見学会2012 公演情報 五反田団「新年工場見学会2012」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    例年通りで一味違って
    今年の作品はどれもしっかりと作りこまれていて、
    絶妙に可笑しいのですが、
    お正月の座興の域を超えての表現としての切っ先が
    それぞれにしっかりと生まれていて。

    例年同様盛りだくさん、
    少々長めの上演時間ではあったものの
    そのことを全く感じることなく観切ってしまいました。

    ネタバレBOX

    ・五反田団
    業界人のニセモノ「業界人間クロダ」

    肌触りというかテイストはどこか薄っぺらく緩いのですが、
    シーンごとに観る側に像を結ばせニュアンスを伝える力があって、
    場ごとの空気にするっと飲み込まれてしまう。
    ちょっと痛くてビターな業界の内幕ものとも言えるのですが、
    そこに差し込まれたウィットには
    作者一流の
    表層からすっと差し込まれ
    深淵に至らないところで漂っているような質感があって
    気が付けば舞台の世界の苦みと可笑しさの
    双方に捉われている。
    作りごとというか嘘っぽさがありながら
    透けて見えるようなリアリティが絶妙。

    初日にもかかわらずエッジが効いていて
    積み重なる時間にも
    かくのごとく時がながれていくような
    シニカルな感覚があって、
    可笑しさの向こうにある
    時間への俯瞰がそのまま作品のテイストとして心に残る。

    作り手の語り口のしたたかさを
    改めて実感することができました。

    ・ポリスキル
    2回登場。
    こちらも一定のクオリティが担保されていて・・・。
    音楽としてもぐたぐたにならずに効かせるし
    意外といっては失礼ですが最初にバックコーラスを演じる
    「ポリスラブガール」にもさりげなく曲を膨らませる力があって。

    その5人組のバックコーラス、
    中央でおにぎり(?)を食べる女性の存在が
    ボディーブローのように効いてくる。
    こういうことを淡々と、しかも、
    しっかり曲のリズムや尺に合わせて
    したたかに全うされると
    観る側には後からで
    嵌り物的な可笑しさが倍返しでやってくる。
    演じているのが
    去年、他の舞台で拝見して
    秀逸な刹那の表現力を感じた女優さんで、
    空気の作り方や存在を場になじませるのが
    何気に凄く上手い。
    作り手にとっては小ネタのひとつであるのでしょうけれど
    個人的にはとても強い印象がのこりました。

    後半のコーラスガール達には華があって。
    それはスパンコールの衣裳だけではなく
    場を染め上げる所作のようなものからより強く感じられる。
    役者の方がガチで雰囲気を作ると
    やっぱり色が強いなぁと感心。

    入り方は地味なのですが、
    観る側にとって奥深さのある企画でありました。

    ・ザ・プーチンズ
    「ロボット演劇のニセモノ」

    工場見学会を毎年観ていると
    テルミンの音色に「春の海」を聴くように
    お正月を感じたり。

    ただ、今年の彼らは一味違う。
    ロボット演劇と称するつくり物の説得力、
    そこに重なるクオリティを持った音楽。
    そこには単なる茶番だけではない
    ひとつの世界観が生まれていて。
    それがサゲの展開の切れを創り出すベースになっていく。

    音楽にも魅了されたし、
    一粒で何度もおいしかったです。

    ・紅竜会
    「七餅」

    着物姿の女性というのは、やっぱり艶やかだし、
    獅子舞いをみるとお正月を感じる。
    まあ、この獅子の面が、どうにも情けなく
    それだけでも実に味ワイ深くあるのですが、
    役者の方が中に入ると、
    動きにしなやかさや豊かさが醸し出されて
    その獅子頭の表情にもさらなる                                                               ニュアンスが生まれる。

    今年は龍年ということで、
    一枚の布を竜に見立てての踊りが加わって
    こちらにも見応えがありました。

    それと、楽隊が、なんとも言えず良い。
    木琴・リコーダー・パーカッションの3pcは
    どこか素敵にチープなミザンスなのですが、
    楽師たちが壇上できっちりとテンションを作り
    過たずに音を舞台に絡ませていく姿にからは
    ウィットがあふれ、
    それが心地よく感じられて・・・

    どこか戯れている態のなかに
    洗練されたエンターティメントとしての秀逸を感じました。

    ・ハイバイ
    「金子の退団のニセモノ」

    物語の枠組みの語り口がとてもよく
    観る側にすいっと物語の構造が入り込んでくる。

    自らの劇団のリアリティを借景にして
    恣意的とも思える対立軸が作られ
    シーンごとの空気感が積み上げられていきます。

    個々のシーンごとの
    キャラクターたちの個性の貫きのようなものが
    ぞくっとくるほどに可笑しい。
    上手く言えないのですが、
    そこにあるものは柔らかく揺らいでいるのですが
    場の中でのや流動性のようなものに欠けていて
    しなやかに交わりきらず
    しかも個々のベクトルにしなやかな踏み出しや
    場の空気をそのままに納めさせない貫きがあって。

    シチュエーションはワンアイデアに近いと思うのですが
    そこから徹し広がっていくものが
    前のめりで観てしまうほどに面白い。

    物語の収束の仕方にも
    突き抜け感をもったウィットと切れ味があって、
    舌を巻く。

    別にお正月に演じる必然性があるわけでもないので、
    どこかで是非にもう一度観たいと思わせる
    作品でありました。

    *** *** ***

    何年か前に初めてこの催しを観た時には
    演劇関係者のファン感謝デー的な匂いも感じていたのですが、
    今年の作品は
    お正月を寿ぐテイストやユーモアのセンスは残しつつ、
    従前より演劇やショーとして
    しっかりと作りこまれた感じがあって。
    作品ごとに、
    ある意味悪ふざけ的な部分があることは間違いなく
    観る側にもそこに乗っかって楽しんでしまうのですが、
    その、悪ふざけのクオリティが
    去年・今年と
    より多くのものを生み出すようになったのではと思ったり。

    新年早々、がっつりと楽しませていただきました。















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    2012/01/03 12:47

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