満足度★★★★★
頭がいい人にはおすすめしません
構成力、つまり構造を組みたてる能力がすごくある劇ですね。
映画でいえばタランティーノの「パルプ・フィクション」に近いといいますか。
ですので、一見、知的パズルのような劇ではあります。
ですので、頭がいい人であれば、ものすごく誉めるか、
「筋が読めてしまいました、骨組みばかりが目立ってしょうがありませんでした」と
けなすかのどちらかに二分されるよな劇といえるでせう。
つまりは、タランティーノがつまらない映画であるのはそのせいです。
けれども、
この劇がおもしろいのは、
どんなに複雑に見えようとも基本的には
二部構成という単純な構成をとっていることです。
つまりは、映画でいえば、タランティーノではなく、
あの、知る人ぞ知る、
心底、見る人々をおもしろさで震撼させた香港映画『旺角揸Fit人』こそが
最も近い映画でせう。
さらにいえば、それは「構成」という知的な用語を使わなくとも
単純に「反復」という言葉を使えばすむ程度のものです。
けれども「反復」とは同じものが2度繰り返されることではありません。
なぜなら、まったく同じことは決して2度起きないのですから。
必ず、繰り返される時には、何らかの違いが生まれるのですから。
つまり、反復を楽しむには、その微小な違いをとらえるだけのは繊細さと
官能性、そして「そうか、もう1回、同じことがくりかえされるのか、じゃあ、もう一度たのしもう」という
眞に知的な倒錯性が必要です。
そして、この劇には、繊細さと倒錯性を持つ人間にとっては、
完璧ではないにしても、かなりスリリングな体験を与えてくれる作品になっております。
事実、音響と照明の使い方の細やかさは、特筆すべきものです。
ということで、知的に高みに立って作品を裁くのが演劇への愛なのか、
それとも繊細さと倒錯性をもって作品に臨むのが演劇への愛なのか、
この芝居は、見る人に問いかけます。
つまり、これは正真正銘の「踏み絵」です。
さあ、あなたは、一体、どちらでせうか?