一九一一年【ご来場ありがとうございました!】 公演情報 劇団チョコレートケーキ「一九一一年【ご来場ありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    時代を描きあげる力・それぞれを浮かび上がらせる力
    場内の使い方に
    観る側をその時代に包み込むような効果があって。

    歴史に織り込まれた普遍的な構造と
    個々の人物から浮かんでくるものの
    交わりから伝わってくるものを
    しっかりと受け取ることができました。

    ネタバレBOX

    劇場が「田」の字のごとく仕切られて、
    そこに通路が作られて・・・。
    正直なところ、どこに座ろうかと迷う。

    でも、物語が始まってしまうと、座る位置など関係ない。
    正面というものが空間に存在せず
    会場の空気全体で物語が紡がれ広がっていきます。

    時代の背景、その国の治世に携わるものたちの姿・・・。
    ピラミッドの中での蠢きや軋み、
    会場のつくりは場に向き合う感じや上下(かみしも)の方向性を作らせない。
    役者達の演技を
    観客は対峙して受け取るのではなく
    同じ時に浸されたような感覚で観続けてしまう。
    観る側に対して
    その時代を客観視にさせないだけの
    空気をかもし出す力が役者達にはあるのです。

    その中で、官吏たちの個人の思いは
    観る側との距離をしっかりと保って表現されていく。
    法律とか政治とかの枠組みのなかにおかれた建前が浮かび、
    建前の狭間に浮かび上がる感情が
    いたずらに見る側をゆすぶることなく
    エッジをもった感覚を塗りつぶさない距離を保って伝えられて・・・。

    さらにはひとりの無政府主義者の素顔が
    舞台にもうひとつの軸を作りだしていきます。
    その凛としたキャラクターの表現は
    単にひとりの歴史上の人物をあらわすにとどまらず
    その人物の姿を借りて、
    彼女の感覚から観たその時代の閉塞感や
    仕組みや枠組みのなかで人が生きることの質感を
    照らし出していく。
    そこには、歴史の肌触りを描きあげていく秀逸さだけに
    舞台を塗りこめさせない
    むしろ、その時代を描いているからこそ
    さらにくっきりと浮かんでくる
    ひとりの女性がまとった「自由」の高貴さと豊かさが、
    観る側に伝わってくるのです。

    高揚感と、苦悩が昇華した透明感の中に閉じ込められた
    その時代の最後のシーン
    さらに時代がすすみ、
    解けた空気が静かに場を満たし、
    観客はとまどいながら時代の柵から開放されて・・・。
    その時代に翻弄された人間と
    外側からその日々を眺めるものの
    色合いの違いがすっと沁みてくる。

    描かれた時代の大枠と
    翻弄され、飲み込まれ、
    あるいは立ち続つづける姿に圧倒されつつ
    でも、作品に織り込まれた「時」の重さだけに終わらない、
    時間や歴史の風通しのようなものも感じて。
    作品のテーマが内包する
    塗りこめられたような重いだけではない、
    繊細さとやわらかさと深さを兼ね備えた
    作品の質感に心をゆすぶられたことでした。




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    2011/12/21 15:54

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  • りいちろうさん

    ご来場有難うございました。
    お客様に作品の空気を体感していただきたくて、このような舞台セットにしました。

    コメント有難うございました。
    これからも劇団チョコレートケーキを宜しくお願いいたします。

    2011/12/31 21:51

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