満足度★★
芸術をテーマとした3作
岡本綺堂の戯曲3本を通して、芸術と生活、芸術家としてのプライド、芸術の継承等のテーマを演劇活動を行う自分達の問題として捉えて描いた作品でした。興味深い観点による戯曲のセレクトでしたが、舞台作品としては訴えかける力が弱く感じました。
楽園王による『近松半二の死』と劇団ING進行形による『修善寺物語』と、その2作をサンドイッチにするように3つに分けて配置された楽園王による『俳諧師』で構成され、連続して上演されました。
『俳諧師』
生活に窮する男が芭蕉の弟子であった旧友に芭蕉の短柵の偽物を作る様にけしかけられる話で、冒頭がカットされていましたが一部の台詞回し以外はオーソドックスな時代劇として演出されていました。
『近松半二の死』
歌舞伎が流行り、人形浄瑠璃が廃れて行く時代を憂いつつ死ぬ浄瑠璃作家を描いた原作の前後に現代の病院でのエピソードが加えられていて、病院のセットや衣装のまま、原作通りの台詞で演じられました。色々な趣向を盛り込んでいましたが意図が分かりにくかったです。また音楽の音量が大き過ぎて、役者の声が聞き取りにくい場面が何度かあったのが残念です。
長堀さんの演出では台詞の区切りを通常より1文節後にずらす手法が使われれ、変な引っ掛かりを感じさせて言葉に注目させる効果があり興味深かったのですが、使う箇所によっては文意が分かりにくくなってしまっていました。
『修善寺物語』
面の職人としての矜持が描かれた作品で、原作の前後に数人が日常的な格好で現れるプロローグとエピローグが加えられいて、演劇を続けていく決意が感じられました。ストップモーションやダンス的表現を用いた、身体性の強い演出でした。
やりたいことは分かるのですが、声や体がそのレベルに達していないもどかしさを感じました。
仮面が鼻メガネだったり、パロディーの様な殺陣のシーンがあったりとコミカルな要素も入れてありましたが、笑えませんでした。