満足度★★★
スタイリッシュな演出
物語や台詞は改変せずに、程良くモダンなテイストを織り込んだ、スタイリッシュな演出が印象的でした。
手前に正方形のステージ、奥に左右や上下に動くたくさんの小さなステージが組み合わされた黒を基調とした奥行きのあるセットがクールで格好良かったです。照明と共に次々と形を変える様が圧巻でした。色や柄がモダンで美しい衣装も素敵でした。
前半は村岡希美さんを中心とした女性5人と3人のアンサンブルが主体となって物語を展開させて、歌やダンスなど飽きさせない要素が盛り込まれていて良かったです。特に小見美幸さんのダンスは躍動感があって際立っていました(本人曰く演出家から目立ち過ぎと怒られたそうですが…)。
富姫を演じた篠井英介さんは巧みな声色の使い分けで、女形ならでは魅力が出ていたと思います。亀姫を演じた奥村佳恵さんは他の出演者に比べて台詞回しがストレートな感じで少し浮いてしまっている箇所もありましたが、小悪魔的な魅力に溢れていました。
康本雅子さんの振付によるダンスがいかにも康本さん的なちょっとコミカルでありながら切れのある動きで楽しかったです。後半になると身体表現のメインが殺陣になり、ダンス的な表現がなくなってしまったのが残念でした。
ハープやオンド・マルトノを用いたフランス的な響きと和楽器を組み合わせた三宅純さんによる音楽は不思議なおどろおどろしさを醸し出していて興味深かったのですが、和のテイストが強過ぎると思いました。録音の音とは別にパーカッションの生演奏があり、殺陣のシーンで効果的に用いられていましたが、せっかくなので他のシーンでももっと演奏して欲しかったです。
全体的に高いクオリティの作品で満足しましたが、スタイリッシュな分、妖艶さが少々足りない様に感じました。このキャスト・スタッフであればもう少し突き抜けたものを見せて欲しかったです。冒頭と中程で新たな要素を付加して現代との繋がりを示唆していたのはいまいち意図が伝わって来ず、不要に感じました。