業に向かって唾を吐く 公演情報 elePHANTMoon「業に向かって唾を吐く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    嫌悪に埋もれない感覚
    感覚として
    冷静に考えると受け入れにくいような表現が
    あったりするにもかかわらず
    それを目を逸らさせることなく
    観客に見せきる力が舞台にはあって。

    いろんな意味で体を張った役者たちが報われて
    物理的な嫌悪の感覚に舞台がとどまることなく
    そこからさらに奥にある
    禍々しく、生々しく、温度と存在感をもって顕われる。
    登場人物たちの内側に息づくものの
    質感に目を瞠りました。

    ネタバレBOX

    冒頭、母親の先生に対する相談のシーン、
    最初は唖然とし、次第におかしく笑っていたのですが、
    そこにとどまることなく
    揺らがない、同じトーンでの貫きがあって
    やがて、観る側のバランスが軋む。

    そこから塗り換わるシーンが
    観る側の感覚をすっとずらしていきます。
    気がつけば舞台を客観的に眺めているというよりは
    その世界の色に染まりながら眺めている。

    食事のシーンは、冷静に考えるとかなり衝撃的で・
    嘔吐感がやってきてもおかしくないもの。
    でも、それを目を逸らすことなく
    むしろ、女性の咀嚼のあごの動きから
    吐き出された食物の形状、
    さらには、それを口にする役者達の淡々とした風情までを
    見つめさせる役者力が舞台上をしっかりと支えて・・・。

    一見安定した世界が崩れていく後半は
    さらに観る側の目が舞台に釘付けにされる。
    エロいとか醜いとかいう感覚が霧散しているわけではない。
    レイプに近い女性のあられもない姿にしても、
    金銭感覚の箍が外れた男の姿にしても、
    衝撃的だし、
    観る側をどす黒く染めるような質感に息を呑むし
    前のめりになってみてしまうのですが、
    でも、それがこの舞台のメインディッシュではない・・・。
    その強さは色の強さが開く
    さらなる感触がこの舞台にはあるのです。

    支配する側の胡散臭さも、
    その枠組みの中でうごめく人間の根源的な弱さというか
    空気にとらわれつつ、それよりもなによりも、
    表層のグロテスクさの内にあるものの感触に
    がっつりととらわれる。

    観る側が、目を見開いて
    もろに、受け取ってしまうもの。
    そして、そうさせる物語の密度や力・・・。
    さらには役者の体の張り方・・・。
    その排泄物が偽物であると理性ではわかっていても、
    グラスにそれが満ちる刹那の密度が導く
    ラストシーンの感覚やつきぬけから目を背けることができない。

    この舞台の世界を全否定しきれないというか
    ビターだけではないテイストをかぎつけてしまう
    自分に対する嫌悪感と、
    さらには表現に対する不思議な充足感。

    終演後、自分が感じたもの、
    さらには自分が踏み込んで眺めたものを咀嚼して、
    もう一度ゆっくりと深い衝撃にとらわれたことでした。


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    2011/11/11 12:08

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