満足度★★★
メディアの(負の)力
現実の世界における様々な問題を、声が色として見えるという現実離れした設定や「カンチェラ」という新体操に似た架空のスポーツを用いて描いた作品でした。
声が色付いて見えてしまうので、人々が思ったことを言えずに暮らしている島に、罪を犯して収監されるために男がやって来て、その男の前では声が無色透明になって他の人に聞かれないことから、島の人たちが集まって心に秘めていたことを打ち明け、島の社会的システムが変容していく物語でした。
インターネットの匿名性によって起こる問題や、マスメディアの権力性をブラックユーモアを効かせて描いていて、寓話的雰囲気の中に怖さを感じました。
「島」「本土」という呼び方や囚人が入れられている鉄の檻から沖縄の基地問題を想起させたり、カンチェラの審査員の不正がフィギュアスケートの審査方法を巡るいざこざを想起させたりと、現実に起きている問題に関連するトピックを盛り込み過ぎたために焦点がぼやけてしまい、盛り上がりに欠ける様に思いました。
声が色として見えるという、表現の難しい設定をちゃんと可視化していましたが、あまり効果が感じられませんでした。出演している友人に確認したところ、役者ごとの声の違いを自動認識して反応しているとのことでしたが、手動で変化させている様に見えて残念でした。
映像や効果音にレトロ感を狙ったとも感じられない微妙な古臭さがあり、いまいちに感じました。転換の処理もスマートでなく勿体なかったです。
役者達はベテランの人も多く、安定した演技で見応えがありました。ベンガルさんのコミカルな演技が楽しかったです。