満足度★★★★
フィクションとしての夏
春から続いている夏シリーズのラストを飾る作品で、ここ最近の作品での試行錯誤している感じを払拭する様な、瑞々しい爽快感がありました。
探偵事務所の2人、甲子園好きな姉弟、世界征服を狙う2人、離れ離れになってしまう男女、1人佇む浴衣の女のエピソードが断片的に重なりながら描かれ、よく分からないながらも圧倒的な高揚感で感動させられてしまうラストへなだれ込む構成で、いつものパターンなのではあるのですが今までと異なる手触りがありました。
いかにも夏を思わせるアイテムがたくさん出てくるのですが、リアルな夏というよりかはイメージとしての夏という雰囲気で物語が描かれていて、うっすらと立ち上るノスタルジックな感じが心地良かったです。今までの作品に比べて文学性とエロティシズムが強く打ち出されていて、新鮮でした。
様々なサブカルチャーからの引用やベタな台詞が狙って配置されているのにスノッブな嫌らしさを感じさせず、とてもナチュラルに表現する、この劇団の特色が良く出ていたと思います。脚立やブルーシート、バスタブ、台車などの工業製品を他の物に見立てる演出も面白かったです。
毎回思うことですが、女優陣が魅力的で、それぞれの個性が引き立っていました。びしょ濡れになりながら演じる北川麗さんの不思議な色気が特に印象に残りました。