満足度★★★★
きわめて文芸的なDNA
とにかく100分を飽きさせないのは並大抵のことではない。驚くべきは、基本はテンションの高いスラップスティックであるのに「調子に乗った」ところがまったくないことだ。
調子に乗りきってしまう直前で、よくいう「緻密に計算されている」というのとは少し違う方法で手綱が引き戻されている。だから100分もつのだ。
筒井康隆の「脱走と追跡のサンバ」(それと、もしかしたら1970年代の荒巻義雄)を読んでいるときと同等に近い浮遊感を、これほど強く芝居から感じたことはなかったかもしれない。
アフタートークで演出家が「書いているときは音楽のことはまったく頭にない」と言っていたが、その筈だと思う。
これはきわめて文芸的なDNAから発現し、それを阻害する要素を排除しながら作り上げた芝居だと思う。心地よかった。