みちゆき 公演情報 椿組「みちゆき」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    未知へゆく
    クライマックスで胸にスッと落ちる気持ちの良い作品。チラシに載ってる作者の文章通り「死を体験する」内容でありながら、観劇してみて怖さや悲しさはあまりない。でもテーマはどストレートに「死」、物語もどストレートな内容でわかりやすかった。設定の妙が際立ちありがちな結末に落ち着いたらヤダなと思っていたが地に足着いてる内容で安心しました。役者も安定感あってさすがだなぁと思った。所々にあった役者全員でひとつの場面を作る箇所が見応えありました。

    ネタバレBOX

    物語の序盤は愛する人の死を受け入れられない女の純愛的なファンタジーとして見ていた。昔のTVドラマに「究極の愛とは、最愛の相手の死を受け入れない事だ」という極端な哲学を発する話があったけれど、それを彷彿させる愛の形。死んだはずの男の死体を背負い、北へ北へと逃げる女。この時点では、伏線は「医療ミス」とかありがちなやつかな、って思っていた。ところが、「積極的安楽死」が物語の根底にあることが明かされて、後半~クライマックスで一気に楽しくなった。ファンタジーではなく、リアルな人間の営みなのだとわかると見ていてのめりこんでいける。医療の発達で、どこからが生きていてどこからが死んでいるかが曖昧な情勢。「積極的安楽死」を受け入れる側も、受け入れない側の気持ちもよくわかる。普遍的な命題である「死」。生きてる我々が同時に命尽きる直前まで、「未知」であるがゆえに不安で仕方ない存在である「死」の物語化として、「命は誰のものか」という問い掛けは秀逸だなぁと思う。その「未知」に向かって我々は日々確実に進んでいるのだなぁと再確認する、あまりの自明の理で普段は忘れてしまってるのだけれども。

    舞台の奥へ奥へと進んでいく、舞台美術も効果的でキレイだなぁって思った。また、物語の中盤に、自殺サイトで知り合った人達が死体を触って口々に感想を言い合うシーンが好きで。不謹慎だけど、こういう感情って人間の一面だなって思った。

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    2011/10/27 12:16

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