満足度★★
高級な学芸会
中谷美紀はがんばった。開口一番そんなことを言うのは傲慢な上から目線と思われても仕方ないが、それを敢えて言うのは、次に続くのが「そしてわれわれ客席もがんばった」だからである。
劇場という空間を支配する力は、それが必要になったからと言って簡単に湧き出てくるものではない。
そして彼女にそれがあるかどうかは、たいした問題ではない。
この芝居が結果的に「中谷美紀でなければならなかったもの」に、なっているのかどうか、実のところ問題はそれだけだし、その答えはNoだろう。
役者は全力を出している。脚本も演出も舞台も音も明かりも、手を抜いていない。それなのに「高級な学芸会」のような結果になる。だから客はがんばらざるを得ない。
結果論に過ぎないと承知で言えば、この場合、作劇のプロセスのどこかで、誰かが、手を汚して「できあがってしまいつつあるバランス」を破壊すべきだったのだと思う。
芝居でなにが難しいといってこれほど難しいことはない。