あとは野となれ山となれ 公演情報 トム・プロジェクト「あとは野となれ山となれ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    竹下景子オン・ステージ!
    こういう、観た後に気持ちいい舞台は好きだ。
    3人芝居で、観客を楽しませる。
    役者の持ち味が十二分に生きている。
    さすが、水谷龍二さんは、ツボを押さえた脚本を書く。

    ネタバレBOX

    大衆演劇の一座。
    自分勝手でわがままな座長に、愛想を尽かし、座員と家族は彼のもとから去って行った。
    座長の千羽旭は、あらたな大衆演劇を立ち上げようと座員を集める。
    やって来たのは、訳ありの女性たち。
    それは、若い頃から苦労したと語り、ダンスがうまい若い女性、そして、主婦としての定年を迎えたとして、これからは自分の人生を生きるために、家族を捨てて、長年追っかけをしてきた大衆演劇の世界に飛び込んできた主人公の赤城万里子の2人。

    「演劇LOVE」な展開。
    シェイクスピアの一節から長谷川伸までが全編散りばめてある。

    主人公、赤城万里子の設定が、お芝居好きの主婦というのが生きてくる。

    この物語のポイントは、脚本家の水谷龍二さんが、「誰がお客さんなのか」がよくわかっているというところだろう。
    その「お客さん」をターゲットにしたアプローチが実にウマイのだ。
    冒頭の風間杜夫や数々の俳優の名前を入れた台詞や、ラストの羽二重やおしろいの塗り方など、お芝居好きの気持ちをうまくくすぐる。

    つまり、主人公の「主婦の定年後自分の人生を」「問題の多い家族を捨てて」、そして「お芝居好き」という設定が、観客の多くの層にアピールするのではないだろうか。
    すなわち、観客の多くを占めるであろうお芝居好きの女性たちにとって、そういう設定は、実年齢というとではなく、実感があるのではないだろうか。
    「あるある」と言うよりは、「いいな」に近い感覚で。

    だから、普通だったら、捨てた家族のもとに帰って元鞘になりそうなストーリー展開(そうは言っても、やっぱり家族はいい、とか)にはならず、別の意味での前向きな、新しい人生の一歩を、おしろいで踏み出すということになるのだ。

    さらに、座長というのは、「夫」や「父親」の象徴であり、女性座員、とくに主人公・万里子にとっては、夫をイメージさせる。万里子の夫は若い女性と浮気をしている。
    その夫の象徴である座長が、自らの今までの行動を悔い、さらに主人公の万里子に「どんなことでもやるから言ってくれ」と言わせるというところも、観客は気持ちいいのではないだろうか。

    だから、それに観客は、喝采を送る。

    自分ではできないことへの、つまり、そうならなかった(なれなかった)自分へのレクイエムのようにも聞こえる拍手を送るのだ。
    …もちろんそこまで悲壮なわけではないとは思うのだが(大げさすぎたかな・笑)。

    お芝居は、こういう夢を見せてくれてもいいんじゃないか、と思う。
    ラストはちょっと弱いけど。

    全体的に暗転がやけに多い舞台だ。
    しかし、特に前半は、暗転前に主人公・万里子のいい感じのキメ台詞があったりするのだ。その度に拍手が起こる。舞台設定が大衆演劇ということもあり、そんな、つい拍手を送ってしまうという雰囲気にさせる演出も憎いとろこだ。
    主人公を演じる竹下景子さんの歌、座長の宇梶剛士さんのあてぶり、岸田茜さんのバレーなど、それぞれの見せ場のようなものも用意されており、それぞれに観客は拍手を送っていた。
    基本的には、竹下景子さんのオンステージなのだが、他の2人も、とてもよかったと思う。

    観た後、気持ちのいい舞台であった。
    …男としては複雑な気持ちでもあるのだが(笑)。

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    2011/10/05 06:09

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  • コメントありがとうございます。

    そうなんですよ、劇中に拍手なんてまずないですよね。
    何回も結構起こってましたよ。
    お客さんの雰囲気にもよるんでしょうけど。

    肩の力抜いてゆったりと楽しめるお芝居でしたね。

    そういう緩い気持ちで楽しんできてください。

    2011/10/06 06:42

    こんにちは。ワタクシもこれは観ます。評価が良いので楽しみです。
    それにしても公演中に拍手って、他のお芝居ではあまりないですよね。
    3人だけで観客を楽しませる嗜好も素晴らしいですね。
    毎回、アキラさんの「観てきた」は本当に楽しみにしています。

    2011/10/05 11:58

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