沈み愛 / #garadama 公演情報 ガラス玉遊戯「沈み愛 / #garadama」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    すれ違い
    大橋秀和の本が好きだ。彼は人間本来が持っている裏側の誰にも見せたくない部分。ひっそり沈んだ深層心理を描くのが上手い。今回の舞台も計らずも被害者と加害者になってしまった友人達の負い目を描いた作品だった。毎回のことながら龍田知美の表情の演技が秀逸で心を打たれる。その演技がこれまた、あまりにも自然なため、まったく違和感がないのだ。それよりも何よりも彼女の声が好きだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    ダイビングの事故で友人達を助けたが為に失明した正登(星野恵亮)。逆に正登に助けられた友人達は生涯、正登に負い目を抱き苦悩することになってしまう。正登の元カノは罪悪感に苛まれると同時に捻くれて屈折していく正登に嫌気がさして別れるも、正登を受け継ぐ感じで盲目の正登と結婚したサトコ(龍田知美)。一見、仲むつまじい夫婦に見えたが、視力を失ってから正登は人間が変わったように性格が歪んでしまう。友人たちが自分を気遣う反面、気詰まりとなって友人達との楽しい会話に入れない情景が描写され、正登自身の被害者意識と友人らの罪悪感が重なり合う展開だ。そしてサトコにも冷たい態度を取る。

    一方で、愛故か同情故か、はたまた負い目からか、自分を助ける為に視力を失った正登と結婚したサトコは正登の投げやりな態度から逃れるように、元彼の宮島と不倫している。ここでの3人の人間関係は鬱積した感情を吐き出すかのような場面だ。盲目だが妻と宮田の関係を知ってるような感情もみせる正登。そして弟・正登の犠牲によって幸せに暮らしているのに弟を敬遠するようになった友人達に絡む正登の姉・幸江。ここでの押し付けがましいウザさは身内を庇う感覚だ。

    これらの感情が渦巻きながらぶつかり合うも、全ての苦しみや引け目や罪悪感や気まずさが盲目になったことで過敏になった正登の心にぶつかり、跳ね返る。そしてそのままサトコに激突し、その欠片が友人達にも波紋のように広がるのだった。

    物語は真正面からみると重苦しい。しかし一人ひとりの感情に置き換えて考えたときに彼らは弱い。登場人物の誰もが弱い。だからこの重圧に耐え切れなくなって自滅的になる。究極の愛は同情から生まれるとも言うが、正登の希望で離婚したサトコは正登に「本当に好きだった。」と告白する。これに対し正登は「自分は好きじゃなかった。見えなくなった目の代わりに誰かを不幸にしてやりたかった。」と吐く。

    素晴らしい舞台だった。主軸は友人達と正登だが、友人たちの苦しみと正登の苦しみの感覚の差を、サトコの弟・幸平とその恋人・志保の係わり合いで解らせる。二つの負い目を背負った者たちの描写だ。直線的な構成だが実は多角面から舞台を見た構想だ。いい舞台だったと思う。惜しむらくはキャストと役柄が当日パンフに載っていない。素晴らしい演技をされた役者の名前は極力、書いてやりたいので、載せて欲しい。
    次回も観たい。

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    2011/10/01 12:21

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