満足度★★★★★
ユーモラスで軽やか
カンパニーデラシネラが劇場以外の場所で公演するときのシリーズ「デラシネラβ」の第1弾は、廃校になった中学校の教室をリノベーションした空間でのシェイクスピアで、大きな劇場では出来ないアイディアを盛り込み、こじんまりとした空間を活かした、60分間の上質なエンターテインメント作品に仕上がっていました。
基本的には物語に沿って進行しますが、芝居としての上演ではないので、戯曲にない台詞があったり、重要な場面が端折られて、そうでもない場面が拡大されたりと原作を自由奔放にアレンジしていました。
出演者が6人なので1人で複数の役を演じるのですが、身体表現を巧みに用いてシームレスに役を変えていく様が気持ち良かったです。台詞が結構ある序盤から次第に身体表現だけで関係や感情を見せる構成も世界観に入り込み易かったです。
組み合わせを変えて様々なものに見立てられるオブジェや、乗り物のミニチュアなどデラシネラ恒例のギミックのあるアイテムが駆使されていて、空間の作り方が面白かったです。特にミニチュアはとても細かいものが多く、教室サイズのこの空間ならではの表現でした。
今回一番特徴的だったのは今までの作品では見られなかった、観客とのコミュニケーションでした。客いじりや、ちょっとした観客参加のシーン(楽しかったものの、いまいち必然は感じられませんでしたが)、途中での席の移動などが盛り込まれ、和やかな雰囲気が漂っていました。
会場が狭いためダンスは少々窮屈さが感じられましたが、劇場での精緻な作品とはまた異なる魅力があり、芸術性を保ちながらも万人が楽しめる作品だと思います。後半は話を知っていないとちょっと分かりにくいシーンもあるので、あらすじを予習してから観た方が楽しめると思います。