悩殺ハムレット 公演情報 柿喰う客「悩殺ハムレット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    圧倒的
    今回は古典ということで、
    物語の骨組みがすでに観る側にあることから
    個々のシーンに役者たちが醸し出すニュアンスの鮮やかさが
    あっという間に観る側を凌駕してくれて・・・。

    そこから一気に疾走する
    圧倒的に豊かで鮮やかな舞台でありました。

    ネタバレBOX

    シェークスピア戯曲のもつ面白さが
    あらかじめ用意されているということで
    作り手は物語の骨格を組み上げる手番に力を削がれることなく
    戯曲を読み解き、個々のシーンが担うニュアンスの表現を
    ぞくっとくるような感性で作り上げていく。

    品格に包まれて置かれるのではなく
    ダイレクトに伝わってくる台詞の意図、
    抜き身のような今様の言葉から
    あけすけに、ダイレクトに伝わってきます。
    個々のキャラクターたちが背負うロールのニュアンス。
    それは言葉にとどまらず、身体の表現や
    刹那の表情の誇張や
    舞台全体に作られる空気として伝わってくる。

    もちろん、物語の構成としてのロールの軽重はあるのですが、
    場面を創るということに関して
    軽いロールを振られた役者がみあたらないのが凄い。
    戯曲に描かれた役柄の大きさや色に縛られることなく、
    ひとつずつのキャラクターの刹那が
    観る側にがっつりと入り込んでくる。

    禍々しいだけではない父の亡霊が纏う華、、
    悪に染まりきらず揺らぐ(褒め言葉)クローディスの内心、
    エロいという言葉を背負いうる母、
    そして、ひたすら重厚に悩むのではなく、
    リアリティを持った苦悩の質感を醸し出すハムレット。
    清純なだけはなくちゃらいだけでもない無邪気さを持ったオフェーリア。
    絶妙な思慮の深度とまっとうな感覚を感じさせるレアーティーズ。
    宮廷内のたくらみの匂いを編み上げるボローニアス。
    ホレイシオの作りだす実直さと悲劇の現場の疲弊感。

    彼らと遜色ないというか、時には競い合うように
    ローゼンクランツやギルデンスターンそれぞれの
    人物像や男っぽさが、役者の美しさに阻害されることなく
    むしろ切れというか味方となって浮かび上がってくる。
    マーセラスとか墓掘りから滲み出してくるにび色の印象に
    役者の震えが来るような表現力と舞台への献身を感じる。
    バナードーが組み上げる冒頭のトーンの確かさが舞台の安定を生み
    オズリックの作りだすトーンが、
    坩堝のような思惑の先に定まった惨劇を
    ぞくっとくるほどしなやかに形骸化させて・・・。
    イングランド使節が一瞬で観る側に渡す悲劇の外側の質感の軽さが
    物語の片端の枠組みとして機能していく。
                                  
    そして、終盤でのフォーティンブラスの物語の受け取り。
    そこには、もう、言葉になしえないようなテイストとともに
    浮かび上がるある感覚が編み上げられていて。

    戯曲に編みこまれた、
    登場人物たちの肌触りが
    古典の枠組みに縛られない、
    戯曲の意訳とニュアンスの描写力の具現として
    役者たちの秀逸な演技から溢れだしてくるとき、
    役者それぞれのときはなられたような演技の広がりの先に
    不滅の名作の骨組みと舞台を満たす感覚の実存感が
    一つに重なる。
    それは、作り手がきっともくろんでいるがごとく、
    役者を見せる舞台として
    圧倒的に観る側を取り込んでいくのです。

    これ、かなうことなら、是非にもう一度見たい舞台。
    かなうか?

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    2011/09/17 11:19

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