シャイロック 公演情報 東京演劇アンサンブル「シャイロック」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    興味深い新釈シャイロック
    シェイクスピアの『ヴェニスの商人』とは趣の異なるアーノルド・ウェスカーの作品。

    役名が同じでも設定やストーリーはかなり違うので興味深かった。

    初演以来、10回の改稿を重ねているそうだが、日本ではこの東京演劇アンサンブルが最新版で初演となる。

    ユダヤ人についての捉え方、描き方がかなり違う。

    シェイクスピアファン、シェイクスピアにあまり興味ない人、両方に観てほしいと思った。

    有料プログラムに本戯曲が生まれた背景や分析、解説がなされているので、興味のある方には一読をお勧めする。

    再演を希望したい。

    ネタバレBOX

    観終わった後、各自が自分の中でいろいろ思いを巡らせることができる作品だと思った。

    東京演劇アンサンブルは「あー、面白かった」だけで終わらない作品を上演し続けている劇団。

    私にとっては「人生の良き友」のような劇団である。

    この劇場、唯一自宅から歩いて行けるので、引っ越したくないとさえ思っている。

    がめつい高利貸しというイメージのシャイロック(松下重人)が、本作では、読書家で教養があり、貴族のアントウニオウ(竹口範顕)に人生において影響を与えるほどの存在に描かれている点にまず驚く。

    しかし、その知識と教養が娘のジェシカ(樋口祐歌)には重荷で、反抗を生む。

    シャイロックに姉リヴカがいる設定で、志賀澤子の温かみがとてもよい。

    ポーシャ(清水優華)も颯爽としたスーパーウーマンではなく等身大の描かれ方で、ジェシカ同様、自分の境遇や結婚に迷いや悩みを持っている。

    「肉1ポンド」の証文の意味や、判決の出し方、受け止め方もシェイクスピア版とは違うが、ここで明かすのは興をそぐので控えます。

    2組の若い男女のハッピーエンドで終わらず、かなりほろ苦い幕切れ。これがまたよい。

    バサーニオウ(公家義徳)の妻に対する考えかたに男の本音が出ていて面白い。実は私の父が結婚の時に母に送った手紙を死後に発見し、その文章とほぼ趣旨が同じ台詞で苦笑してしまった。

    終幕の男たちの語らいの場面に、いつものアンサンブルの団風が出ていて、借り物の役でなく俳優の個性が役になじんで見えてとても良かった。

    松下重人は、誠実な人柄がにじみ出る俳優なので、このシャイロックは似合っている。

    ただ、松下を含め、初日ではないのに俳優の何人かに台詞のとちりがあり、手ごわい戯曲だったのだろうが、残念だった。

    清水は成長著しい期待の若手で最近好演が続いているが、まだ線が細く感じた。

    バサーニオウがベテランの公家なので、個人的には桑原睦のポーシャで観てみたかった。

    桑原は行動力ある銀行家の娘レベッカをくっきりと演じるが、ポーシャも似合うはず。

    桑原ならジェシカを保護して世話をするという包容力も出たと思う。

    ジェシカの樋口は見事抜擢に応え、難役をこなした。もっとよくなるはず。

    実際に建築学専攻の本多弘典が若き建築家ロドリゲスを演じているのも面白い。

    本多は加藤健一の若いときに似た目力がある個性的な俳優で、少ない出番でも印象に残る。

    名家に生まれ、屈託はないが100%善人ではない青年グラチアーノ役を尾崎太郎が好演。

    三瓶裕史の肖像画家モーゼ、浅井純彦のシャイロックの協力者テュバルも、いかにもその役らしさが出ていた。

    こういう脇の層の厚さがこの劇団の魅力でもある。


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    2011/09/14 22:22

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  • teeakiraさま

    いつも、コメントありがとうございます。

    名前の通り、俳優のアンサンブルが醸し出す雰囲気が素敵なんですよね。

    初めて拝見した時から、とてもワクワクする知的な劇団で惹かれています。

    こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。

    2011/09/22 23:28

    ご来場ありがとうございました。
    観続けていただいてる方ならではの感想で、
    嬉しい限りです。

    的確な俳優陣への評価も、
    劇団員にとっては、励みになります。

    これからもどうぞよろしくお願いいたします。

    2011/09/22 22:59

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