はじめてのにんげんがり 公演情報 劇団桃唄309「はじめてのにんげんがり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    3.11以降の、彼らからの、ひとつの答えかもしれない
    と言うのは、深読みしすぎか。

    とにかく、頭を回転させながらの観劇。
    観客に、物語の「答え合わせ」的な引っ張り方以外の「面白さ」を見せてほしかった。

    ネタバレBOX

    カフェがある町は、どうやら人口が減っているらしい。
    「側溝の掃除」「下草刈り」などということが、何度も出てくるあたりが「除染」を想起させ、ただならぬ事態が町に起こっているような気配を漂わせる。「停電」と「断水」の予測の放送も。
    そして、人でない者が跋扈し、彼(ら)によって「消されて」しまうような、不気味さもある(しかも、その手を下すのは「にんげん」でなくてはならないという皮肉)。
    不安感の中にあって、弟の意思を継いでカフェを出そうとする男と、それにかかわってくる人々のストーリー。
    しかし、さらに時間を超えて、ドアとドアから抜け出せない男女が絡んでくる。
    この設定がいまいちしっくりとこない。
    なぜならば、彼らは未来へ進もうとしているようだが、ドアから抜けだそうとはしていないからだ。何度も同じドアからドアへ移動するだけ。もし、そういう境遇に陥ったならば、ドアの中にいる人たちに助けを求めたり、抜け出す方法を考えたりするのではないだろうか。
    自分に出会ってしまえば、ドカン、という説明がわずかにあるのだが、それだけではどうも…。
    特にカフェの男としばらく過ごすことになる女の行動が理解できないし。
    あまりにもドタバタと出入りしすぎるので、回数が多すぎてストーリーのアクセントにもならないし。

    そんな違和感もあり、見ている側としては、ついつい「答え合わせ」のようなものをラストに求めてしまうのだ。
    しかし、「答え」は出てこない。
    何がどうなっていくのか? が気になってしょうがなかった。
    のだが、結局、きちんとした説明はない。
    もちろんそれは「アリ」なのだが、であれば、そういう「設定」や「辻褄」探しではないところに、物語の面白さを見出せるようにしてほしい。
    つまり、いろいろ引っ張るだけ引っ張っておいて、放り出された感覚なのだ。

    物語自体が、そういう「設定」以上に「何か」を感じ取れるのであれば、そういう投げ出され方に対しても納得できたと思う。

    そうではなく、しつこい繰り返しが、延々続くように見えてしまい、その「繰り返し」に面白さが乗っかってこなかったような気がしている。
    登場人物たちの出入りがあまりにも、毎回同じなので、いささか飽きてくるのだ。
    「しつこい繰り返し」に意味があるように見せ、「なるほど」と思わせてほしかったということだ(なぜそうなったか、という説明はないとしても)。
    「不安さ」も増長することもあまりないし。

    このストーリーで唯一、いい感じだと思ったのは、ラストだ。
    カフェを継いだ男が、初めて弟がやろうと思っていたカフェを訪れるシーン。

    それは、話の中盤で、男が弟の彼女だった女にプレゼントを贈り、自分の気持ちを伝えようとするのだが、結局きちんと渡せなかった。
    時間を行き来する女が、それを知り、きちんと渡そうとして、再度プレゼントを持って出る、というシーンとつなげて考えると(未来ではプレゼントが消えてなくなり「ということは渡せたのではないか」という台詞にもつながっていく)、カフェを継いだ男の、「新しい物語」が、始まるのではないかという予感をさせるのだ。

    つまり、舞台の上では、時間が前後しながら進行しているのだが、観客に見せる時間設定としての「最初のシーン」ではなく、「新しい最初のシーン」としてつながっていくように感じたからだ。

    ここで、「除染」や「人でない者」たちが登場する、「不安な世界」を「やり直す」というような感覚がしたのだ(…結局それは無理なんだろうけれど)。
    それが、不安な今への、彼らからの、ひとつの答えではないのか、と考えたのだ。
    本当は未来は過去には干渉できるはずもないのだけれど、今からの未来には影響を及ぼせるという、あたりまでになってしまうと、深読みすぎになってしまうのだろうけれど(笑)。

    コーヒーや紅茶の味についての台詞が多く、ずっとコーヒーのいい香りが漂っているような作品だった。
    普段コーヒーなど飲まないのだが、帰りに7-11で、ついコーヒーを買ってしまった。

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    2011/09/13 08:09

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