かもめ 公演情報 第七劇場「かもめ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    前衛的な「かもめ」
    「かもめ」自体、読んだことも、また上演を観たのも、大分前のことで、
    記憶もかなりあやふやになっているが、公演時間が70分と言うのは、
    それにしても短いんだけどなあ、と思いつつ会場へ。

    ネタバレBOX

    会場に入ると、白い衣装の女性4人がすでに舞台に立っていて、
    なにやら時々、「77」とか、二桁の数字をつぶやきながら、
    舞台上を静かに動いている。

    舞台上は基本的に無機質の雰囲気で、白い質素なテーブルがあって、
    その上に「かもめ」(の剥製)がいる…正確には上から吊り下げられていて、
    テーブルから浮いている、という感じ。

    椅子は、地味だが見た目の悪くない木製のものが十数個置かれている。
    彼女達の中にはこの椅子に座っている者もいるし、
    また、やはり上から吊り下げられたブランコに座っている者もいる。

    開演前の注意やブザーが鳴り、相変わらずこういう雰囲気なので、
    始まったのかどうかイマイチはっきりしないまま。

    しかしここに、男が1人入ってきて、雰囲気が変わる。
    ところが、この会話は「女性患者と男性精神科医」というもので、
    つまりは、女性は精神病患者、
    ここは精神病院という設定であることが分かる。

    その後、舞台奥に、ロシア風の衣装の人物達も現れ、そして彼らも芝居に加わって、一応「かもめ」らしくなる。

    しかし、前衛的雰囲気は変わらず、オペラの重唱のように、
    数人が同時にしゃべりだしたり…もちろん、台詞はほとんど聞き取れない。

    音楽は、ストラヴィンスキー「春の祭典」の
    ゆっくりした部分が使われたり、
    また、いかにも前衛演劇特有の効果音が使われたりで、
    こちらも前衛的性格を一層際立たせていた。

    で、例えば、コカを精製して、より作用の強いコカインを作ったり、
    というのと少々似ているかな、という気がした。
    つまりは、前衛的手法によって、これまで「物語」というオブラートの中に包まれていたものが、明瞭にされてしまう、ということ。

    そうなると、あとは、観る者の嗜好の問題、つまり、
    こういう結果を好むか好まないかで、評価が分かれてしまう気がする。

    私個人としては、骨格を明確に示してしまうより、
    肉も脂肪も皮膚もあった方が良いと思うタイプなのと、
    もう1つは、「精神病院」という手法自体、決して新しいものでは無いし、
    一時期流行った、芸術・芸術家を「なんでも精神病」にしてしまい、
    それで、芸術の本質を解説できたとする風潮に
    疑問を感じていたこともあるので、
    まあ「私の好みではない」というところです。

    もちろん、役者も(冒頭台詞の聞き取りにくい人はいたが)
    良い水準の人たちと思うし、
    (全体の中での位置づけという点では多少しっくりこなかったが)
    舞台奥の枯れ木のある部分に雪が降る場面は
    とても美しいシーンであった。

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    2011/09/13 01:02

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