謎の球体X 公演情報 水素74%「謎の球体X」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    面倒な人たち
    何か曰くありげな人達が噛み合わない会話を繰り広げる、ブラックでシニカルな作品でした。照明や音響の効果もほとんどなく会話だけで進められる物語に不気味な魅力があり引き込まれました。

    怪我の絶えない妻と周りに気違いと思われている旦那の家に、小さい頃の友達だと主張する女や、お節介焼きな大家、家庭の事情で離れ離れになった妹など、どこか壊れている人々がやって来て、それぞれの独自の価値観で話し、会話の中で力関係が入れ替わっていく様子が描かれていました。
    まともな登場人物が1人もいなくて妙なやり取りが続いて笑えるのですが、同時に人間の心の怖さも描かれていて恐ろしかったです。

    中盤で仄めかされる要素がラストで爆発してメタ的な展開になるのですが、そこまで不穏な台詞のやり取りでジワジワと盛り上げていた緊張感が崩れてしまっていました。その破れかぶれ感もたぶん作者の意図なのだとは思いますが、ラスト前までは見事な会話の展開だったので、その締め方が勿体なく思いました。

    ステージ・客席を含めて星のホールの半分しか使わないという大胆な空間プランは、おそらく必要とされる演技エリアから来ているのだと思いますが、がらんどうの空間に設置されたスピーカーから聞こえてくる蝉の鳴き声や車の通過音などの環境音がどこから鳴っているのか分からない効果を生み出し、また役者の声も普通の舞台とは異なる残響が響き、不思議な孤立感が感じられました。

    どこか病んでいるキャラクターを役者の皆さんが好演していました。台詞と台詞の気不味い時間など絶妙で、笑ってはいけない場面程笑いが込み上げて来ました。特に、旦那役を演じた古屋隆太さんが淡々とした口調の中に狂気を感じさせて素晴らしかったです。

    「謎の球体」がまったく話の中で出て来ず、本当に謎のまま終わってしまいました。

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    2011/09/10 00:52

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