キネマの天地 公演情報 こまつ座「キネマの天地」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    井上ひさしさんの「役者LOVE」な物語
    こんなストーリーだったとは! 
    フライヤー等の説明(ここに書いてある説明も)を前もって読まなくてよかった、と思った。

    ネタバレBOX

    松竹の蒲田撮影所にあるスタジオに集まってくる。当代きっての大女優たち4名。
    それぞれに自分が今の松竹を支えているというプライドがある。
    彼女たちは、松竹の超大作に出演するということで、監督に呼ばれたのだった。

    しかし、監督はその前に、彼女たちに前の年に、そのスタジオで行われた舞台をもう一度上演したいので、その読み合わせをしようと言い出す。

    実は、その舞台の稽古中に、監督の妻であった女優がその場所で亡くなったのだった。

    女優たちは、いやいやながら、監督の指示に従い、本読みを開始するのだが、どうも様子が変である。

    そこに、掃除夫や脚本家、さらには築地署の刑事と名乗る男が次々と現れてくる。

    監督の意図はどこにあるのか…。

    そういうストーリー。

    映画における、というより、役者たちのさまざまな想いや、感じ方、自負、苦労が、役者間のヒエラルキーに絡めて披露される。

    特に、女優として、その道を切り開いてきた、トップ女優のエピソードは重みさえ感じる。


    彼ら、つまり役者とは、濃くて、嫌みで、自意識過剰で、自己中心的で、そのくせ階級主義・年功序列がまかり通っていて、ということを、さらにをデフォルメして描いていながら、その視線は優しい。
    彼らの姿が愛らしくなってくる。

    本能的で、自分の欲求には誠実で、しかも自分の職業−役者−に、多大なプライドを持っている。

    これは、井上ひさしさんの「役者賛歌」ではないだろうか。
    それは、主演を張る大俳優だけでなく、脇を固める、すべての役者に向けられたものであったと思う。

    そして、役者と言うのは、役者であるということに、貪欲な人々である、というところではないだろうか。また、それによって、自らの矜持が保たれているとも言える。
    その彼らの性格を逆手に取って、見事な喜劇に仕立てていたと言っていいと思う。
    しかも、単なる喜劇というのではない、役者たちへの愛が語られている。

    幾重にも仕掛けられたラストへの罠が、巧みで面白い。
    そして、刑事=犯人だった男の、ラストの台詞から瓶の中身を呷ってからの展開は、客席から思わず拍手が上がったほど、あざやかだった。

    また、彼が、結局3回言う台詞が、シビれるほど、素敵で美しいと思った。
    もうこれだけで涙モノである。
    演じても演じても終わりはないし、役者すべての想いが詰まっていたと思うのだ。

    大上段に天下国家にもの申すというのではなく、井上さんの間近にいる人たちを語り、彼らに捧げられた、美しい作品だと思った。

    濃すぎて嫌みなほどの4人の女優陣(麻実れいさん・三田和代さん・秋山菜津子さん・大和田美帆さん)は、本当に素晴らしい。まさにその世代の観客たちを魅了していた、大女優たちだった。
    さらに、木場勝巳さんも、エネルギーに溢れ、本当に見事だった。

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    2011/09/08 05:13

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