「エダニク」「サブウェイ」 公演情報 真夏の極東フェスティバル「「エダニク」「サブウェイ」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    【真夏の會『エダニク』 】シンプルで、美しいと言ってしまう、会話劇
    3人の役者のバランスもいい。
    しかも再演ということもあってか、台詞も役も身体にぴったりしていて、うまい。標準語と関西弁の関係もいいのだ。
    なんとなくのユーモアととぼけた感じもナイス。
    劇作家協会新人戯曲賞の講評でマキノノゾミさんが「満点」と言った意味がわかる

    ネタバレBOX

    関東のどこかにある、屠畜場の休憩室として使っている1部屋が舞台となる。
    登場人物3名で、シンプル。

    「美しい」と言ってしまいそうになるほど、きれいに台詞が組み合わされた台詞劇。
    3人(夏さん・原真さん・緒方晋さん)の役者のバランスも素晴らしい。
    「息」がぴったりと合っている、というのはこういうことを言うのだろう。
    「その人」が見えてくる。
    「人」がいる感じがする。

    スクエアの上田さんが演出というのも頷ける。スクエアがそうしたあたりをきちんと押さえていく劇団だからだ。

    また、劇作家協会新人戯曲賞受賞というのもよくわかる。
    そのときの講評で、マキノノゾミさんが「満点」と言ったのはこういうことだったのか、と。
    特に、関東を舞台としたことで、玄田の関西弁が活きている。関西の人が見てもそう感じないのかもしれないが、ツッコミの言葉がいいのだ。とてもいいアクセントになっている。リズムが出てくるというか。

    屠畜という仕事を通じて、「命」と「仕事」というキーワードのぶつかり合いになるのだが、そこが強くクローズアップされるわけでもない、微妙なバランスがいい。
    「仕事」そのものに込められている、さまざまな現実と想いが描かれていると言ってよいだろう。
    それに対しての疑問が、この仕事の場合の「命」であり、このキーワードを投げかけることで、屠畜という仕事(あるいは食)についてクローズアップするだけでなく、「働く」こと、「仕事」することに、意識が向かうのだ。

    職人として淡々と仕事をこなしながらも、プライドがあり、力量もある玄田、自分の仕事に対して、(家族との関係で)なんとなく負い目のようなものを感じている沢田、そして、やっと仕事に就いたばかりで、口先だけの青臭い理想を語る(しかし、その発する言葉には、根源的な重みのある)伊舞、彼らの三者三様の「仕事感」がそこに浮かび上がる。

    剥き出しな彼らのぶつかり合いが面白いのだ。駆け引きのような台詞が楽しい。

    とは言え、ギスギスした感じよりは、独特のとぼけたユーモアがどことなく漂うのがいいのだ。
    脚本もあるのだろうが、やはり、演出の呼吸がいいのではないだろうか。

    息子に認められたと(あるいは、思い込んで)喜ぶ沢田、怪我をさせてしまった相手に対して負い目を感じていた玄田は、今回の事件を通して、相手のことをもうあまり深く考えなくていいと思い始めたように見え、また、本格的に仕事の第一歩を踏み出した伊舞など、いろいろあったけど、また次の日がやってくる、というラストもなかなかいい。

    真夏の會、また観たいと思った。

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    2011/08/29 07:08

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