明けない夜 完全版 公演情報 JACROW「明けない夜 完全版」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    悪のパンデミックを防ぐため
    先ずもって驚かされるのは、作りこまれた美術である。

    これまでの劇場でも当然リアルを志向する演劇を展開してきたJACROWであるが、ここまで贅沢にリアルを追求した美術はいままでにもなかった。

    息苦しいほどのリアルで観客を追い詰めるJACROWとしては、今回、この美術がリアルであることが決定的に重要である。

    ネタバレBOX

    また同じ意味において、雷鳴が、驟雨が、夕暮れが、闇がリアルであることが決定的に重要である。

    そこで演じる役者たちの時間や視界がリアルであることが、おそらく役者たちの本気度を恐ろしいほどに高めている。

    美術を舐めてはいけないわけで、僕の知り合いの美術をやっている人は、映画の美術なんだけれども、たとえば登場人物の部屋を飾るときに、映像には映らないところにも凝ると言っていた。というのも、例えば、登場人物の部屋で、本棚にどんな本があるか、また机の引き出しをそっと開けたときに何が入っているか、ふと明けてしまった机の引き出しに入っていたビー玉、それを見た役者の本気度が変わり演技が変わるから見えないところにも凝る。美術も役者の演技を引き出すことのできるものでないといけないと言っていた。

    同じような意味において、リアルを志向するJACROWにとってシアタートラムという空間で、贅沢にリアルな美術、またその他の効果がいつも以上にリアルに機能することはとても重要で、たとえば、狭い劇場ならば、ここからここまでに歩く時間が短く、その思考も短縮せざるを得ないのに、シアタートラムと言う空間でならば、あっちからこっちまで歩くだけで、人はいろいろと物を思う。人を愛すること、憎むこと、嫉妬すること、イラつくこと、ふと考えてはいけないことを思う。そういう意味でも、シアタートラムと言う空間でJACROWが芝居を作るというのはとても画期的なことだったと言わざるを得ない。JACROWはある程度の規模をもった劇場で、予算も潤沢に使ったリアルな美術でやってこそ本領を発揮するのだと思う。

    だから、これまでJACROWの芝居を見て何ほどか思ったことのある人ならば、今回のシアタートラムの公演を観に行かねばならない。

    また、これまでJACROWのことを気にしながら足を運んでいなかった人は、無理をしてでも足を運ばねばならない。

    リアルな美術、リアルな演出に触発された役者たちの恐るべきリアルが、本来見えないところに隠されているはずの真実をすべて暴きだす。その悪の腐臭は吐き気を催させる。しかし、それはワクチンだ。悪のパンデミックを防ぐための。演劇はその役目を果たしうる。JACROW「明けない夜 完全版」はその演劇の力を知らしめるに相応しい芝居である。

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    2011/08/28 06:16

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