満足度★★★★
スリリングな『エダニク』(真夏の會)
屠場の一室で繰り広げられる3人の議論が、小細工のない演出で描かれ、スリリングな会話に引き込まれて90分間があっという間でした。
気弱で現実主義的な沢村、情に厚い職人肌の玄田、チャラチャラしていながら時折感情的になる伊舞、とタイプの異なる3人の優劣関係が入れ替わりながら展開するのですが、どの人物も単純に共感できるような性格には描かれていないので、3人の関係の緊張感が最後まで持続していて物語に強い推進力がありました。
舞台上には登場しない人物も巧く話に取り込んでいて、物語に広がりが出ていました。
職業差別や命の尊さなどのトピックにも触れていましたが、そこに深入りして情に訴えたりはせず、所々にコミカルな場面を盛り込みつつ価値観の異なる労働者の関係性にフォーカスを合わせていたのが清々しかったです。
役者の声の大きさや間の取り方が絶妙で素晴らしかったです。特に時折見せる無関心なそぶりの表現が良かったです。
舞台の上には机と椅子と電話のみしかなく、照明の変化やBGMは転換のときだけしか使わないという必要最低限な道具立てでしたが、3人の会話のやりとりが面白く、全く飽きることがありませんでした。
今回合同企画をした極東退屈道場の様々な仕掛けが施された作品とは正反対のストレートなワンシチュエーションの会話劇で、対比が興味深かったです。