「エダニク」「サブウェイ」 公演情報 真夏の極東フェスティバル「「エダニク」「サブウェイ」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    【エダニク】「タブー」にチャレンジした意欲作
    「エダニク」って何だろう?外国語かな?と思っていたら、
    「枝肉」のようだった。

    はじめは、職場の休憩室らしいテーブルと椅子だけの簡素な部屋で、
    男二人が登場し、カップ焼きそば談義という、
    いわばどうでも良い話から始まる。
    なんかユルイ話だな、こんなのをずっと見ていたらたまらんなあ、と思っていたら、話は次第に面白くなってきた。

    ネタバレBOX

    ここに若い男がもう1人入ってくる。
    口の利き方もイマイチだし、色々話してみると、
    どうもアルバイト以外に勤めた経験が無く、ニート歴が長い様子。
    職場の工場部分で何やらもめ事が起こっているらしく、
    社員のうち年かさの男は出て行き、若い方の社員と、ニート歴の長かった男の2人だけとなる。
    社員の方は結婚して、子供も1人いる33歳。
    ところが元ニートは30歳で3歳しか違わない。
    そこで、ついつい、「社会人の先輩」として説教を垂れる。

    ここまでの話から、この職場が食肉工場、つまり屠殺業であり、
    社員2名は屠殺に従事していることが次第に分かってくる。
    さらに、元ニートと思って小馬鹿にしていた青年は、
    実はこの食肉工場に仕事を出している畜産農家の御曹司であり、
    父親が社長、息子は今日は父の運転手役として来ていたのだった。
    それを聞いて、いままでの先輩口調が、敬語に変わる(笑)

    ここで、年かさの社員が戻ってきて、若い社員と交替する。
    ところが、この男は、得意先の御曹司と知っても、
    ぶっきらぼうな態度を改めないどころか、
    「お前のところは面倒な仕事を出す」とまで言ってしまう。

    完全に次期社長になる御曹司を怒らせてしまったところに、
    若い社員も戻ってくるが、会話はますます険悪になり、
    しまいには刃物まで登場する・・・。

    きれいに生肉に加工するために熟練と体力を要する職人的な側面や、
    ヘマをすると自身が怪我をしかねないという厳しい側面を持つ一方で、
    屠殺業従事者がやはり差別の目で世間から見られている側面等々、
    中々演劇のみならず他の分野でも中々取り上げられないし、
    言い換えれば取り上げにくいテーマを、しっかり捕えていたと思う。

    さて、これらのやり取りの中で台詞に登場するのが、
    屠殺従事者への色々の見方、考え方。
    畜産農家は、食肉として売り渡すために、牛や馬を丹精込めて育てる。
    しかし、それを食肉工場に売り渡す時は、
    やはり(多少なりとも)寂しく悲しいもので…
    せめて、心を込めて解体してほしいもの…。
    たしかにそうかもしれない…。

    一方、食肉会社に勤めていれば、一々悲しんだり哀れんだりしていては
    仕事もできないし、ほとんどの人は肉を食するのだから、
    肉を食べる人が屠殺従事者に偏見を持つのはおかしいだろう…、
    と思いながらも、やはり家畜が苦しみながら死んで行くのは確かだし、
    また、我が子の一言一言が気になったりもする。

    ちなみに、実は私はベジタリアンでございまして、
    肉を食することはあまり好まないのだけど、
    それは、例えば特定の宗教の戒律にしたがって、
    食べたいけど我慢しているという話ではなく、
    言わば単純に「私は食べたくない」という話なので、
    同席者が肉を隣で食べていても平気だし、
    他人にベジタリアンになれ、とも言わない。
    それに、もしも屠殺が悪いことと考えるなら、
    辛い思いで屠殺をする人よりも、他人に辛い屠殺をさせて、
    美味しく肉を食べる人の方が、一層よろしくないとも思っている…。

    やっぱり世の中には、地球規模では大規模な虐殺も無くなっていないし、
    日本でも、死刑執行、妊娠中絶、屠殺、動物実験・殺処分…と言った
    普段中々取り上げられない「闇」のような世界が、厳然と存在して、
    そしてそれらが日々行われているのも確かなのである。
    ある意味、私はこういう世界にも目を背けないでいたい、
    と勝手に思っている…演劇の素材となるかどうかは別として。
    以上、余計なことも書いてしまったが、
    それほどこの芝居にインパクトを受けてしまったという次第である。

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    2011/08/26 11:51

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