これは僕が神様になりたかったけれどなれなかった話で、僕の彼女が実は地球だったってオチが待っている話なわけで、 公演情報 劇団エリザベス「これは僕が神様になりたかったけれどなれなかった話で、僕の彼女が実は地球だったってオチが待っている話なわけで、」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    ちゃんと生きようとする
    エリザベスの作品って、なんか自意識過剰で自己嫌悪しまくりでこの世のすべてを忌み嫌ってるひとりぼっちの男の子のぐちゃぐちゃーっとした思考回路が脳内から飛び出して散らばっちゃってるイメージがあるんだけど、そうやって自己防衛してきたフィールドから外側にある世界をみつめて、誰かの痛みを知ろうとする方向へ意識がすこし傾いていく。それだけでもかなり前向き。

    ネタバレBOX

    僕と幽霊の女の子との魂の交流を中心に学園内のなにげない日常や彼らをとりまく世界のことがやや自嘲的な日記を書き連ねるような趣で描かれていて。どちらかといえば無理がある設定もギャグとシリアスの往来に隙を与えず一気に加速させることで奇妙な説得力がもたらされていた。

    だけど、ラブコメというには少々無理があったような・・・。

    クラスメイトにしても、担任教師にしても、なんだかとても胡散臭くて、アンドロイドっぽいから、主人公の苦悩が生々しくて、真実味を引き立たせているようにおもえたけれど、あんまり意味がなさそうなギャグ的要素が強すぎちゃって、純愛におけるドラマティカルな要素だったり同じ場面が無限にループするようなダウナーな空気感が薄れてしまっていたような気がした。
    耳の穴から入っていく砂の粒がどんどん肺に落ちていって窒息しそうになってる・・・なんて透明感のある詩的な表現もあったのに、太宰治の人間失格の一節をモノローグすることで、生きにくさへのイマジネーションが閉ざされてしまうような印象を受けた。また、僕と彼女の距離感だったり、息づかいををつたえるだけの時間がすこし足りない気がした。もっとずっとふたりのことを見ていたかった。

    コメディのパートではショートコントや寸劇、CM、ドラマ、ゲームの1コマなどを巧みに取り入れパロディ化したギャグが種類も数も豊富で飽きさせないようなつくりになっていたので、笑いのツボは刺激させられっぱなしだったものの、ネタ見せ的な笑いも多くてちょっと辛かった・・・。苦笑

    シーンごとに振り返ってみると林先生とメルトの戦いっぷりだったり、知的生命体としての平田オリザの存在だったりとエスプリが利いていておもしろかったところをおもいだせるのだけれども全体を通してみると、無為に100万回生きるよりもほんとうにすきなひとと一度だけ生きることがどれほど素晴らしいことであるか、そしてそれが叶わないことはどんなに哀しく切ない気持にさせるのか、っていう作品の肝になる描写が少し弱い気がした。なんだろう。人を好きになると『メルト』に感染して死んじゃうかもしれないけど、それでも好きでいられるだろうか。とかそんな感情の揺らめきというか燻るような焦燥感に突き落とされたり惑わされたかったのかも。

    認められなくても、受け入れざるをえない運命と引き換え(受難)に、記憶とかすかなぬくもりだけが残るラストシーンは儚くて美しかった。
    あなたをずっと見守っているから。ってメッセージはシンプルだけどすてき。

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    2011/08/20 03:45

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