トロンプ・ルイユ 公演情報 パラドックス定数「トロンプ・ルイユ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    夏バテ気味の観客に
    いつもと少し違う夏、
    酷暑の中で
    こういう、気楽に入りこめて
    グイっと楽しめるお芝居はありがたい。

    人馬一体のしなやかさにとりこまれて
    たっぷりと楽しむことができました。

    ネタバレBOX

    人と馬の重なりや切り分けがとてもしたたかで、
    役者たちのダブルロール(?)が
    そのまま舞台のふくよかさに変わっていくような部分があって。

    木で作られたジンプルな椅子の重なりで
    パドックが生まれ厩舎の雰囲気が醸し出されていく。
    馬主や調教師、予想屋や観客の風情が
    ちょっとコミカルに、でもどこかぞくっとするようなリアリティを持って
    描かれていて・・・。
    人間がまねる馬の仕草が、
    気がつけば、馬の人間臭さにまで進化していて目を瞠る。

    まあ、馬の世界も人の世界も
    いろいろとあるよなぁみたいな。
    覚めたりすねたりの心持も
    達観や諦観、闘争心も
    知らず知らずのうちに観る側に置かれている。

    だから、丸亀の競馬場で
    ずっと海を見ている馬たちの気持ちがわかるような気がする。
    そりゃ、馬たちの会話は作りごとだけれど、
    海を見詰める心情には
    観る側が重ね合わせたくなるなにかがあって。

    さらには、ジャケットを着込んだ馬たちの態度や会話にも
    サラリーマンたちのありようや心情がしたたかに
    移しこまれていることにも気づくのです。
    だからこそ、より一層、馬たちのレースに対する姿勢ややり方なども
    ぞくっとするほどにリアルに感じられる。

    ゲートが開くときの馬(?)たちの走り出し方にも
    個性があっておもしろい。
    ロートルの馬に活躍の場がうまれたり、
    中央から外された馬のプライドが悲劇を招いたり。
    ぐいぐいのめりこんでしまうような派手さはないのですが
    作り手の寓意が観る側を飽きさせることなく
    日々の俯瞰へと導いていく。

    酷暑が続くなかで、個人的にちっとばてているのかも知れなくて
    大上段に振りかぶられるお芝居は
    観ていてもちょっとだけつらいことがある昨今ですが、
    そんな観客にこういう口当たりのお芝居は
    とても優しい感じもして。
    この時期にこういうお芝居を上演してくれるのも
    作り手のセンスなのかなぁと感心したり。

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    2011/08/14 08:20

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