ケージ 公演情報 ミームの心臓「ケージ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    テーマに感動した
    ネタばれにならないように感想をどう書けばよいかなかなかまとまらず、偶然観ていた知人とも意見交換しているうちに遅くなってしまいました。

    パンフに「一人でも多くの人に観ていただきたいので、良いと思ったらクチコミしてください」という趣旨の一文があったので、主催者の方には申し訳なく思います。

    自分のツイッターのほうでは、先にポイントのみ感想を書きましたが。

    まず、テーマがよく、人物のキャラクターもはっきりしていて、よくまとまっていたと思います。

    何よりも、娯楽として観るだけでなく、社会的な視点が裏付けにあり、手法にも好感が持てました。

    舞台美術もセンスのよさが感じられ、音楽が控え目で、演出も抑制を聞かせてわざとらしく盛り上げることをしなかったのもいまどき珍しく、私の好みです。

    若い人が演劇を通して、前の時代にも思いを馳せ、こういうメッセージを届けてくれるのも大変うれしく思いました。

    日本の未来もまだまだ捨てたものじゃないぞって心強くなります。

    次回作も期待できそうです。

    ネタバレBOX

    全共闘世代の3人がいかにもその時代の人らしく見えたのがよかった。

    実際、あの時代にこういう若者をリアルタイムで見ているだけに、よけいにそう思った。

    薙乃(朝戸佑飛)の革命への一途さ、官僚の家を捨て、出自を隠して革命に加わる中で薙乃に思いを寄せる藤間景子(小林依通子)の清冽さ、革命への迷いを持ちながら時代の渦に巻き込まれる織部(池田周大)のナイーブさ。

    口調や雰囲気にあの時代の若者をよく再現できていると思った。


    薙乃がお嬢様の黒岩(毛利悟巳)を見て、「40年後にもまだブルジョワ階級が存在してるのか!」と失望する場面、大真面目なだけに可笑しい。

    世代間の断絶とよく言われるが、当然、我々は年長者と若者という図式でしか前の世代とは出会えないわけだが、その時代の若者として、前時代の人に対峙したらどうなるかという、この手法に関心を持った。

    中心の男性2人、薙乃と現代人、結里(中田暁良)の白熱した議論がもっと聞きたかった気もするが、主軸が「イデオロギー対立」ではなく、「人間的アプローチ」にあり、それも学生らしく悪くはないと思った。

    もし、将来、もっと広い世代向けに芝居を作られる際には、さらに深く切り込んだ姉妹篇を観たい気もした。

    SFの定式として行動的リアリティーの描写に欠ける点が気になったという知人の意見に私も同感だが、それを超えてテーマに感動したという点でも知人と一致した。

    具体的には、夏と冬という違う季節で、この山荘の一か所でワープし、次元的なひずみがあるわけだが、小屋と言いつつ何部屋もある山荘で、若者たちは一緒に部屋を移動する。

    ならば、体感気温の差は?とか、食事をしないのはなぜ?と思ってしまう。

    須藤(笹木皓太)が「身も蓋もない」と言うべきところを「根も葉もない」と表現した台詞があり、これは須藤がまちがえている設定なのかもしれないが、必然性がないので気になった。

    3億円事件や佐世保事件を盛り込んだり、終盤で結里と祖母の関係が明らかになるなど、工夫のあるストーリー。

    薙乃たちは浅間山荘事件を想起させるが、それだけに、次の世代に思いを託して命を捨てる決意をする場面では胸が詰まった。

    サラリとした幕切れで、もうひとつインパクトがほしい気もしたが、これもそうする演出意図は伝わってきたので納得できる。



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    2011/08/08 16:35

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