実験都市『ご来場ありがとうございました。』 公演情報 演劇ユニットG.com「実験都市『ご来場ありがとうございました。』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    とても面白く拝見しました。
    全人類の幸福を実現する為に作られた「実験都市」で生きる人々の物語。

    舞台の「仮想」と僕らの居る現実、実験都市という「仮想」と僕らの住む現実、役者の演技の「仮想」と僕らの関わる人間関係など、様々なリンクを促すヒントが提示されてました。

    答えを一切出さず、あくまでもリンクを促すのみの手法は、大変知的好奇心を刺激される良作だったと思います。

    俳優さんはセリフが歌う方が半数ぐらいいたように感じましたが、力ある方が多かったように思います。中でもワンさんの役の方が抜きん出て素晴らしかったです。その次にアンドウ役の方が素敵でした。

    ネタバレBOX

    まず前半の30分ぐらい、いくつかの伏線を張られます。
    物語が進まないまま、伏線が控え目に顔を出してました。
    観客はこれをどのように拾えたかで、
    大幅に楽しみ方が変わってしまうのではないかと思いました。

    実験都市は現実社会に起こっている事・起こった事は、無駄だと思えるような事でもすべて盛り込まれます。
    これは、この実験が成功したなら、現実の都市でもその実験結果を盛り込むという計画のもとだから、無駄だと思われる事もすべて盛り込む必要があったのだと受け取りました。砲撃・警官・ハイヒールに至るまで、それも意味がないようで意味がある。

    つまり、この実験をするには当時の現実に酷似した仮想社会を作って初めて進められる。現実の都市とは完全に切り離された環境下で、ほぼ現実の都市と同等の条件で行わなければならなかった。
    だから実験都市にしか影響を与えない人口太陽という存在も作り出す必要があったんだと思いました。

    芝居が進むにつれて現れる「人間性回復装置」という名の存在は、最も深く関係していたい人の顔に見える(求める人間になる)ようです。
    まず求める人間に見えるという存在が、このような名前で呼ばれている事にまた面白味を感じ、作者のセンスを感じました。
    決して「人間性回復装置」とは断言できないような存在がこの実験都市で存在している事が、あくまで実験たる所以を感じました。
    納得できるような存在であれば、それは完成されてるものですものね。
    だからこそ、結果論ですが、それがループを続けてしまう末路になる一つになってしまったのも理解ができそうでした。
    後半でその「装置」の顔を見てもなにも錯乱等しなかったのは、太陽が壊れたり偽善者がいなくなったりの過程で効力を失ったからなのでしょうか?

    最後に他人であるはずの数名で家族が出来上がりましたが、これも実験たる所以ということで良いのでしょうか。それが幸せとはにも繋がってるようにも感じました。もとより幸福論は様々語られるテーマで、今も一つの答えでは収束できてない事ですので、あえてこれだ!と断定する必要もないな、ああ、それがまた作者の意図か・・・と受け取りました。
    最後に弱い自分を言い聞かせるように言っていたセリフは、一番最初にも言っていたセリフでした。本当はそんな事思ってもいないのに・・・と感じたり出来たのは、やはり役者に力量があったからなんだと感じました。

    ある方が靴が砂漠向きではないという感想を書いてるのを見受けました。全く的外れの感想だと感じました。これは実験で、都市の生活を再現する必要があるので、砂漠に向いた服装というのは二の次です。きっと現実の都市では砂漠ではなく、どちらかというと僕らが住んでる今の都市に近いのでしょう。彼らは彼らの役割を担うためにそうした服装であったはず。亡命に適した服装かどうかなんては無駄な考慮としか言えないと思います。

    あと今回は原作者がいるので、外人の役名で上演された?かどうかはわかりませんが、リンクを張り観客に促す手法の場合、なるべく観客がリンクしやすい作品のにするべきだと、個人的には思ってます。
    なので、我々に伝わりやすい名前(日本人の名前とか)や人間関係を用いたほうが、僕個人としてはですが、より切迫して感激できた様に思いました。

    1

    2011/07/31 22:28

    0

    0

  • ラブさん、この劇評。LOVEです。「へえ、そういう風に捉えてくれたんだ・・・」って一番嬉しいですよ。三浦の「しめしめ」って感じじゃない。嬉しい!今後ともG.com宜しくお願いします。

    2011/08/02 13:55

このページのQRコードです。

拡大