ヒューマンエラー 公演情報 643ノゲッツー「ヒューマンエラー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    たった一つの汚点で空回る
    今回の舞台はとにもかくにも本が素晴らしい。そして和太鼓を使った音響、トルコ行進曲なども。過去に起こしてしまった罪を題材に主人公の人間関係が崩れていくさまの描写はやはり現代社会が持つ残酷さだ。また全てのキャストらの演技力で舞台を盛り上げたし、主人公・松井役の伊藤毅が演じた何処にでもいるような平凡さはやはり秀逸で見事だった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    松井の部屋になにかと集ってくる同僚と友人達。彼らは松井に相談をしたり、頼みごとをしたりと身近な存在だった。ところがある日、松井の過去の犯罪歴を暴露した記事が掲載されてからは、この人間関係が崩れてしまう。今まで松井が積み上げてきたものが一気に崩壊してしまうシーンだ。

    一方、松井の姉の不倫をきっかけに、姉の持つ闇までもが吐露されてしまう。これもそれも過去に松井が起こした暴行事件を理由に、家族が「犯罪者の家族」と罵られ加害者の家族が受ける被害の構図だ。松井自身は14年前に少年院に送られ罪を償ったものの、世の中というのは、中々その罪を許してはくれないものだ。

    こういった経緯もあって松井は部屋に電灯を灯すことは避けてランタンを灯しひっそりと生きていたはずだったのだ。そんな松井は自分に関る人たちが不幸になってしまうのを嫌い一度は死のうと考えるも、思いとどまるのであった。

    終盤にかけての松井の独白で落涙する。弱い人間も一生懸命生きている、という独白だ。人生に於いて一人でも理解者がいてくれるというのは生きる希望だとも思う。そうして松井は「これからは堂々としていよう。失敗しても堂々としていよう。」と部屋の灯りを燈すのだ。

    風船を使った演出はこの舞台を幻想的に魅せていたと思う。そうして最後のトルコ行進曲はこの物語の悲哀を乗り越え、これからの人生の応援歌のように思えた。人生の影をさりげなく描写しながらも、その実、現実の社会を真正面から取り上げていたと思う。

    ある意味、衝撃的で素晴らしい作品だった。

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    2011/07/30 16:40

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