実験都市『ご来場ありがとうございました。』 公演情報 演劇ユニットG.com「実験都市『ご来場ありがとうございました。』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「滅びの都」からの再生
    あまりにも素晴らしい舞台だった。どんなふうに褒めてもきっと足りない。物語は未来都市で生きる人々を扱ったSFものだが、舞台セットは椅子のみで殆どない。音響と照明、衣装とキャストらの演技力でもって、観客にそのシーンを想像させるという技。しかし、ワタクシには、風の吹きすさぶフカイの砂漠の真ん中にひょっこり現われた実験都市の情景が目に見えるようだった。またこの壮大な物語を書いた三浦剛の頭脳に改めて驚かされる。
    序盤で撒いた伏線の回収も終盤できっちり掴み取る。主役は案内人(佐藤晃子)だったが、彼女の衣装はどことなく「風の谷のナウシカ」の旅人のようで、ひじょうにさまになっていた。また、案内人が肉の塊となるラストは一枚の切なくも美しい絵を観てるような芸術的シーンで泣きたいほど狂おしい場面だった。そうしてあまりの感動に泣けた。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    実験都市の中で生かされている人々は全人類の幸福を実現するため、割り当てられた仕事に従事している。空には人工の太陽が輝き,この都市にある研究所がこの世界の中枢だ。この実験都市から裏都市へ案内人と共に亡命を決行する三人の男女が通ることから物語りは大きくうねり出す。

    アルカージィが連れていたボーランドと呼ばれている者は、実験によって生み出された装置で、これは見た人によって切実な顔にみえることから、恋人だったり、娘だったり、母親にだって見えてしまうのだから、考えたら人々を崇拝させ世界を支配することだって出来てしまう存在だ。しかし、この者の使命は皆を幸せに導くという運命を持っていることから、他人の幸せを見て己の幸せを感じるという、云わば幸せの原点でもあるのだった。

    一方、この実験都市と対極にある裏都市は既に滅びているのだった。そうしてこの実験都市も既に滅び行く運命なのだが、これを知っているのは案内人こと、マルガリータだ。彼女こそは何回も再生し、そして何回も落日の彼方に向かって歩く案内人だったのだ。

    幸福の議論で、相対的な幸せと、絶対的な幸せの説明の構図が実に面白かった。またこの都市全体がアルカージィの書いた小説どおりに動かされてしまうというSFチックさも絶妙な面白さだ。結局薬局、人間は何処に居ても身近な幸せを求めて彷徨うのだ。そうしてやはり身近な幸せで満足し世界をみつめることが出来ないのも人間だ。しかし、ワタクシはこうしたちっちゃな蟻のような人間が好きで堪らない。

    人々の思い出が消えてしまうシーンの放心状態の演技力はお見事だった。脇役は居ない。それぞれのキャラクターの立ち上がりも秀逸で見応えがあった。

    ラストで繰り返す世界と繰り返されるマルガリータのくだりの展開は次に訪れる再生の場面も想像されて赤い太陽が眩しかった。やがて・・二人が家を作り家族を作り、町を作り都市を作ることから、人々の営みは始るのだ。

    ここに関った全員に拍手を贈りたい。素晴らしいものを観ました。それは喜びです。



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    2011/07/29 17:50

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  • G.com三浦>
    コメントサンクス。
    とっても素晴らしい物語でした。
    映画でもイケルような場面のシーンはまるで地上のラピュタのよう。

    すんなりと物語に入れたのははやり脚本の秀逸さとキャストらの演技力だと感じました。
    そして、時折、ヒューヒューと風の音が響く情景は、外の世界の暗黒さを物語っていました。
    ワタクシはこういった架空世界のSFものが大好きです。
    それはいつか、本当に起こる得る未来の予想図でもあるからです。

    マルガリータは裏都市が存在しないことを知りながら、三人の亡命者の案内をしていたのは、裏都市に希望があると信じていたものへの配慮だと感じました。人は希望さえあれば生きていける。
    これはロマンです。壮大なロマンを感じ観ていて震えました。

    ですから幕後にキャストらの挨拶があった時には、感動でうるうるしながらも、手が千切れんばかりに拍手しました。

    今でも、こうして書きながらもうるうるしてしまいます。
    良い物を見せて頂きました。またこの感動を忘れずに観に行きたいと思います。

    良い公演とは何も回数で勝負するものではないと思います。
    1年に1度の公演だろうとも、充分練り上げて完成させた舞台に観客は感動し、その拍手喝さいを受けて、劇団側も喜びや新たな感動を体験するのだと思います。

    はい。ポーランドの装置は悪にも善にも使えると思いました。
    ポーランドを操る悪の組織が居たとしたら、世界を完全に支配できる。

    ずっと応援していますよ。頑張って素敵な物語を作ってくださいね。

    2011/08/02 16:20

    みささん。あまりの感動で鳥肌が立ちました・・・。「ありがとう、そしてありがとう」としか言いようがありません。感謝。また、G.com見に来てください。公演回数はおおくないですけど、いろんな実験やってます。ボーランドが世界を支配するって、まじで、ちょっと、結局南極ちょー怖いですね。。。そんな話も面白そう・・・。三浦剛でした。

    2011/08/02 14:42

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