愛しきボクラの夏休み 公演情報 ザレ×ゴト「愛しきボクラの夏休み」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    「夏」、つまり「あの夏の日の想い出」感にこだわってほしかった
    時間軸や場所を行き来する、結構大変な舞台だったと思う。
    それを見せるにはもうひとつ力が足りないように感じた。
    ただし、これは今の段階のことであり、若い彼らが、その意欲と若さで克服していくことは可能だと思う。
    それに期待したい。

    ネタバレBOX

    最初に思ったのは、「ボクラの夏休み」と題しているにもかかわらず、「夏」があまりキーワードになっていないことだ。
    卒業式後のエピソードを入れる必要があったのだろうか? もちろんそのほうが成立しやすい設定であるのはわかるが、「あの夏の日の想い出」に集中し、例えば秘密基地では、観客に夏草の強い香りが感じられるようにすべきではなかったのだろうか。要所要所に夏のキーワードを的確に挟みつつ。

    そして、脚本として複雑っぽく、面白そうな予感をさせるのだが、「面白く」にはなっていかない。

    それは、1つには、物語の軸がきちんと絞られていないことにある。
    結局、作家になった女性の恋話なのだが、その女性が主人公になっていかないのだ。所々で作家の物語であることが明かされるのだが、そこで念押しされても、彼女の物語になっていかない。
    彼女を中心とした、あの頃の仲間たちとの想い出話としても、誰が軸なのかがイマイチ見えてこない。もちろん、(回想シーンの)主人公は作家ではなく、彼女が恋した男性でもいいのだが、その軸がしっかりしていないので、物語が散漫になっていく。
    犬のエピソードも物語に収斂されていくわけでもなく、中心となる物語を飾る1つのエピソードにしては、扱いが大きいし、そういうエピソードが各所に散りばめられているわけでもない。

    また、「これは一体どういうことなのだろう?」というストーリー仕立てなのだが、それにしては前半の、興味の引き方が少々足りない。もっと観客を引き込むようにできていれば良かったと思う。後半になって、それぞれがつながっていることが明らかになるのだが、それを意識させるようなストーリーにしてあれば、つまり「軸」がしっかりしていれば、引き込まれ率も高かったのではないか。

    そしてもう1つには、役者がこの物語についていけていない感じは否めない。力の差があり、台詞を覚えて言っているだけ、の人が目立った。
    もちろん、いい雰囲気を持っている役者もいた。特にモモコ役の盛田千文さんは印象に残った。舞台に対する姿勢のようなものを感じたのだ。

    さらに、対面式の観客席で、舞台は観客席の間に長く引かれているのだが、こうする意味はあまり感じられなかった。というより、必要あったのか? と思ってしまうところに問題はなかっただろうか。

    それと、ちょっとしたブレイク的に挟まれる、ダンスやモノローグでの歩行シーンは、物語とマッチしていないように感じた。必然性がないと言うか。
    ちょっとカッコいいから、「今風の演出を盛り込みました」というように感じてしまった。
    特に、ぐるぐる歩きながら宇宙についてそれぞれが話すというのは、あまりにも『わが星』。しかも宇宙の話で、子、孫とか。あの舞台をリスペクトしているのかもしれないが、結局それが物語に活きてこない。単にその場だけだったように見えてしまった。

    もちろん、いい演出は取り入れて自分のものにするのは良いと思うのだが、それには「意味」が必要だ。形だけ取り入れても面白くなるはずがない。必然性があって初めて意味が出てくるのだから。

    厳しことを連ねたが、まだまだ若い劇団のようなので、若さと意欲と未来に期待できそうではある。

    つでに、もう1つあえて言うと、観た回は、観客の多くが劇団員の誰かの知り合いのようだった。ほとんどの観客が終演後に帰らず、役者たちを取り囲んでいる。そこに聞こえるのは「良かった」「良かった」の合唱。もちろん本心もあるだろうが、それだけを単に鵜呑みにしてはダメだということを肝に銘じてほしい。偉そうな意見だけれど…。

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    2011/07/24 07:49

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