満足度★★
リーディング・ミュージカル
ホラ吹きのペール・ギュントが世界を回りながら己れ自身を探し求める奇想天外な冒険譚を、休憩込みで3時間弱のリーディング上演という意欲的な公演でした。
リーディング公演とは言っても、役者の動きや照明、キーボードと歌の生演奏がふんだんに用いられていて、台本を手に持ちながらの芝居といった趣きで、視覚的にも情報があるので、見応えがありました。
第1部は真面目な演出だったに対して第2部前半は少々ふざけた感じの趣向も取り入れていましたが、あまり笑いを取れていなくて、物語の流れを途切れさせていたように思いました。
会場の立地条件を生かした演出は、空間の広がりを感じさせて素敵でした。第2部後半からラストまでの演出はペールの生きた時間の流れを象徴的に描いていて、効果的でかつ美しかったです。
役者達は熱演でしたが、元々そういうシーンの多い物語とはいえ、声を張って台詞を言うところが多すぎて、疲れました。会場のサイズに合わせた発声をした方が観客に感情が伝わるし、喉も痛めなくて済むと思います。
マイム的な身体表現を用いるならば、もっとこだわって欲しかったです。
今回の公演のためのオリジナルの音楽は、ミュージカル音楽でよく見られるコード進行が多用されていて分かりやすさやシーンを盛り上げる力はあったのですが、オリジナリティが感じられず、印象に残りませんでした。グリーグ作曲の名作と比べるのは酷かもしれませんが、グリーグの曲を使った方が情景や情感が伝わってきたと思います。
しかし、ミュージカル的な場面を入れて作品にメリハリをつけるアイディアは楽しかったです。