このまちのかたち【終了致しました。ご来場くださいました皆様に心より感謝致します。有難うございました。】 公演情報 机上風景「このまちのかたち【終了致しました。ご来場くださいました皆様に心より感謝致します。有難うございました。】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    抑制のきいた佳品
    九州・大分県の小さな港町で起こった食中毒事件を芯に、4人の人物の関わり合いを描いた佳品。

    声高にではなく、淡々と語られる事実の重み、心の傷、他者へのいたわり、後悔、怒り、憎しみ、戸惑い。

    ドキュメンタリー・タッチで凄惨な事件がテーマだが、どぎつさはなく、水彩画のような味わい。

    舞台装置を使わないシンプルな黒い舞台面に、人物がくっきりと描き出され、余白の美しさを感じ入る。

    饒舌な芝居が増えているなか、たまにはこういう静かな作品を週末に鑑賞するのもいいと思う。

    1時間20分という上演時間も抑制がきいている。

    ネタバレBOX

    舞台となる町にはみかん畑があり、みかんジュースの地元製造メーカーがある。そのみかんジュースに殺虫剤と同成分の毒物(当初農薬とも思われたが)が混入され、お祭りの日に
    20人以上の被害者を出した。

    この設定が、狭い地域社会を端的に表現している。

    一命をとりとめたが後遺症で不自由な体の戸部友里(石黒陽子)が、自主映画を撮る友人の本橋理恵子(浜恵美)に事件当日の様子を思い出しつつ、静かに語り始める。

    夫が勤める会社のみかんジュースを娘と分け合ったが、帰宅後、気分が悪くなった友里が病院に行っている間に娘は苦しみながら亡くなってしまう。
    ひとり娘を失った友里の深い悲しみが観客の胸をえぐる。

    娘の死の床での夫・隆昭(古川大輔)の様子を語る件がこの物語の眼目となる。

    意識がもうろうとして病院に行く前後のことをよく覚えていないというが、同じものを口にしただけに、なぜ、念のため、娘も一緒に病院へ連れて行かなかったのか疑問が残ったが。

    夫は心を病んだ妻から離れ、妻は実家に身を寄せ、夫は給料を妻のもとに振り込みながら、家に帰らず会社に寝泊まりしている。

    取材の途中で声をかけてきた風変わりな女性、寺門(長島美穂)を、友里から聞いた話の断片から事件の加害者と推測した理恵子は、隆昭と寺門を引き合わせ、事件の核心に迫ろうとするが・・・。

    長島美穂の寺門が秀逸。ユーモラスな感じさえする語り口が歪んだエキセントリックな性格をリアルに浮き彫りにしている。

    最後の「妻の映像」の再現部分が、この夫婦関係の再生の糸口をも暗示し、見事な余韻を残して終わる。






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    2011/07/09 02:15

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