【すくすく】 公演情報 タテヨコ企画「【すくすく】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    バタバタ感が強く、もっと掘下げがほしかった
    こちらの劇団は初見なので、これまでの好演については知りません。
    今回については、少々物足りなさを感じてしまったのが正直なところ。

    会場に入ると、舞台上の大道具は、思わず童心に帰ってしまうような
    童話的・幼稚園的な雰囲気。
    音楽も、(曲名を正確に思い出せないが)やはり童心に帰れるようなクラシック曲。
    それで、そういうお話かと思ったら、全く違い、
    子供を持つ大人のドロドロした世界を描いたものだった。

    ネタバレBOX

    さて、最近、私の評価の高くないものでよく書くことで、
    「怒鳴り合いが多過ぎ」というのがあって、
    この芝居もやはりそうであった。

    繰り返すが、別に怒鳴り合いシーンが悪いということではない。
    ただ、いつも怒っている人は嫌われるし、その怒り自体正当に受け止められないのに対し、
    普段温厚な人が、たまに怒ると、本当に怖いし、周囲へのインパクトも高い。
    それと同様で、怒鳴り合いシーンが多すぎると、
    効果は減殺され、クライマックスも無くなってしまう。

    これは一般論だが、台本としてイマイチの作品に、怒鳴り合いが多いのは、
    迫真の演技が要求される怒鳴り合いシーンに
    安易に頼りすぎているのではないか?と思うこともある。

    一応この芝居のクライマックスは、
    水沼夫人が、故意に友人(夫の不倫(?)相手)からの
    メールの欠席連絡を黙殺して、
    無断欠席と思わせたことや、その不倫(?)関係など、
    すべての「良からぬこと」が発覚して、
    感情が爆発するシーンなのだが、
    怒鳴る人がいればなだめる人がいて、
    ところがなだめてた人が、今度は怒鳴っていて、
    しかも、怒鳴っている内容が論理的にもどうかというもので
    (怒っているので理屈がめちゃくちゃ、という意味ではない)、
    しかも、そういうのが、このシーンのみならず他のシーンでもあって、
    観る側にとっては全くしっくりこなかった。

    また、前半部でも、ばたばた走り抜けるシーンがとても多かった。
    これは、向かって右(上手)側に、園児の面倒を見ている部屋や
    外への出入り口があり、
    一方、向かって左(下手)の奥側に、
    親達のミュージカルの練習をしているはやがあるという設定のためで、
    この両部屋の間を、役者たちが、ばたばた何度も走り抜けるのである。
    通り抜ける際の舞台上の台詞も二言三言程度であることが多くて、
    怒鳴り合いシーンと合わせて、
    芝居を非常に落ち着かないものにしていたと思う。

    さて、主人公役で、唯一子供がいないにもかかわらず、
    親のミュージカルの手伝いをしている女性は、
    親の愛情を受けずに成長し、今でも親を憎んでおり、
    子供好きではない夫と共に、子供を持ちたい気持ちもある一方で、
    自分が親になることに大いなる不安を抱えている。
    しかし、強い憎しみの故に忘れてしまったが
    しかし確かに存在していた母への憧憬も浮かび上がってくる。

    そのことは、本人や周囲の台詞、
    そして園に残っていた幼いころの作文などによって、
    次第に明かされるのであるが、
    この辺の掘り下げが不十分で、
    これは他の登場人物についても同様に思えた。

    そして、メール連絡を黙殺し、夫に浮気され、
    さらに親の影響で、子供も瞬きが多くなっている、
    と報告された水沼夫人こそ、
    彼女の母と酷似していて、いわば現在時点での「再現」なのだが、
    なぜかその点には触れられずに終わってしまう。
    (意図しなかったのか、それとも観る者自身で気付いてそれぞれ考えろ、
    という趣旨なのかも分からないが。)

    また、園児も登場しないし、練習シーンも後半にちょっぴりあるだけで、
    舞台外にそれらの場所があるという設定も、上手くやればいいのだが、
    今回はそれによって登場する大人の内面の
    「精神病理的なもの」をクローズアップさせたというわけでもなく、
    むしろ、掘下げの弱さを余計に感じさせる結果となっていたと思う。

    最後に、主人公役のハマカワフミエ は、若いながら独特の存在感を感じさせ、
    好演していたと思った。

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    2011/07/07 07:27

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