うちに来るって本気ですか?【終演いたしました。ご来場まことにありがとうございました。】 公演情報 早稲田大学劇団木霊「うちに来るって本気ですか?【終演いたしました。ご来場まことにありがとうございました。】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    学生とプロのコラボで、面白いものが生まれていく素地が出来ていくのではないかということを、予感させる公演
    前回公演があまりにも素晴らしかった、8割世界から鈴木雄太さんが参加して、出身の学生劇団の演出をする、というので期待して観に行った。

    ネタバレBOX

    学生演劇ならば、という視点で見れば、とてもとても面白かった公演である。
    会場は、とんでもなく蒸し暑く、汗がだらだら出、いい観劇環境とは言えない中で観たのにもかかわらず、面白かったのは確かなのだ。
    しかし、プロの演出家の手によるものと考えると、いくつかの点で残念ポイントが挙げられてしまう。

    ストーリーは、家に来る人を取り違えてしまうという、よくあるパターンのコメディで、誰がどう揃うのかということが徐々にわかってきてからは、それをどう取り違えるのかが楽しみになってくる。
    そして、いい感じに取り違えてくれるので、楽しいのだ。

    しかし、冒頭のテンションの高さだけで引っ張っていくシーンは、正直辛かった。役者の表情見ていても、「この演技必死すぎて、この役者には向いてないんじゃないのか?」と思ってしまうほどだからだ(アフタートークで素顔の役者さかんたちを見て、この普通な感じのほうが素敵に見えたのではと余計に思ってしまった)。
    若さと元気はわかるし、もちろん意図もあろうとは思うのだが、演出はもっと役者を信頼してもいいのではないかと思うのだ。
    つかみとしてのテンションの高さはありだとは思うのだが、ここはテンション高いことを、でかい金切り声一本槍でなく、トーンを落として(つまり、別の部屋の兄弟姉妹に聞かせたくないのだから)、それでもトーンが上がってしまう、というほうが効果的ではなかったのではないか。
    正直、このトーンで全編行くのであれば、辛い90分となりそうだと思ってしまった。

    結果から言えば、そういうトーンが全編にあったものの、中盤以降、ストーリーが転がりだしてからは、笑いも多くなり、楽しい舞台になったのでほっとした。そして、それはラストまで続いた。

    また、とても気になったのが、古畑任三郎のモノマネシーン。古畑の音楽に古畑の劣化モノマネ(モノマネをモノマネしたモノマネ)で、今どき笑えるわけがない。2001年だって笑わなかったと思う。今どきこのモノマネ? というスベリ笑いを目指しているのならば、きちんとすべってほしい。正直、あのテーマ音楽が聞こえて、顔から笑みが全部消えた。百歩譲って、何回も出てくるこのモノマネが、いろいろあるモノマネの1つであったとしたら(2001年に流行った諸々のモノマネとか)多少は印象が違うとは思うが、それにしても、こんな安直なところに寄りかかる感じは好きではない。たとえ学生だとしても、だ。

    さらに、気になったのは、「2001年」の戯曲であり、舞台の上は2001年という設定になっていることだ。どうやら、すれ違いなど諸々の設定が使えなくなってしまうので、現代ではなく、2001年にしたということらしいのだが、どうも積極的に2001年ではなかったようで、途中にそれをギャグにするような個所もあったのだが、積極的な意味での2001年ではなかったことがずっと気になってしまった。正直どうでもいいことなのだが、気になってしまうのだからしょうがない(笑)。

    つまり、2001年でなければならないことが、単なる設定だけであり、積極的に物語りに荷担することがなく、酷な言い方をすれば、言い訳にしか見えなかったことが残念でならない。
    せっかく当時の新聞のコピーを入場時に配ったりしたのだから、それが活きてきたりなど、2001年とリンクしていく物語であれば、いや、リンクしていく物語でなければならないと思うのだ。それは、古典というには近すぎるから10年前が。
    例えば、10年前の風物や社会のことなどをバンバン入れていったりしたらまた雰囲気は違っていたかもしれない。
    コメディに限らず演劇は、当時の風物や社会を反映していくものだが、特にコメディは、その要素があるなしで、笑いになるかならないかの境目になるのだから、確かに難しいとは思うのだが。

    コメディの演出は難しいと思う。脚本がいくら面白くても、演出と役者がダメであれば、まったく笑えない舞台となることも多々ある。
    今回は、手練れである鈴木雄太さんが、うまく笑いのツボを押さえ、手際よく仕上げていたので、きちんと笑いに結びついていた。
    ただし、8割世界で見せてくれる、息の合った畳み掛けるようなテンポまでには行かず、不発ともいえる個所があったのは残念であった。それはしょうがないとも言えるのだが…。
    それは、学生たちには、そのレベルはまだ無理だったのか、あるいは役者と演出が息を合わせていくのには時間がかかるということなのかはわからないが、コメディ(または舞台)は、難しいものだということなのだろう。
    とは言え、少々上から目線で言わせてもらえば、今回、両者ともに学んだ点は多かったのではないだろうか。

    今回の企画、学生とプロのコラボは面白いと思った。OBに限らず、コラボしていくことで、面白いものが生まれていく素地が出来ていくのではないかということを、予感させる公演であった。

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    2011/07/03 20:34

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  • 鈴木雄太さん

    コメントありがとうございます。

    結局、難しい「笑いをとる」という演出を、初めての座組で、しかもコメディが専門でない学生さんたちをパートナーとして、きちんとコメディとして成立させた腕は評価に値すると思っています。
    限られた時間と制約のあるアレコレがあったにもかかわらず、この成功を得たことは素晴らしいと思います。

    そして、なるほど、「古畑」は狙った層があるのですね。でも今どき、とは思ってしまいます。
    ごめんなさい、『SLAM DUNK』まったく読んでません。のでわかりません。そうかー、これが「狙った層」から外れるということなんですね(笑)。

    8割世界の次回公演は、この舞台の素晴らしい戯曲を書いた石原美か子さんの新作(?)を、鈴木雄太さんのホームでの公演ということで、相当面白くなるものと期待しています。
    今からだって予約してもいいぐらいですよ。

    2011/07/06 06:41

    アキラさま

    演出の鈴木雄太です。いつもお世話になっております。
    愛あるご指摘の数々、本当にありがとうございました!

    言い訳は色々ありますが(笑)、ご指摘ポイントは全て「ごもっとも」です。難しいな~。
    まあ「古畑」に関してはかなり狙った層を絞った演出ではありますので若干「仕方ないかな」と思う部分はありますが。

    普段の8割世界よりも遥かに少ない稽古量の中、個人的には「やれる事はやれたかな」と思ってはおります。気持ち的には『SLAM DUNK』の豊玉高校の北野先生の気持ちです…いや、わかんなかったらすみません!(汗)

    本当に勉強になった作品で、今後の自分にも大きく繋げていきたいと思います。

    ご来場、長文のコメント、本当にありがとうございました!
    学生たちも普段とはヒトアジ違うお客様方に観て頂いて、きっと貴重な経験だったと思います!


    8割世界 鈴木雄太

    2011/07/04 12:12

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