亜門版『太平洋序曲』 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「亜門版『太平洋序曲』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    日本のNEXTを考えさせられる
    江戸時代の末、黒船騒動に巻き込まれて対照的な人生を歩むことに2人の男を中心に描き、現在まで繋がるような社会的な視座を携えた作品でした。わかりやすいメロディーで朗々と歌いあげるタイプの曲は少なく、日本の音楽や楽器を取り入れながらもクールな響きの曲が中心で、一般的にイメージするブロードウェイミュージカルとは異なる質感がありました。

    平凡な奉行だったのがひょんなことから昇進して行く与力香山弥左衛門と、鎖国令の出ている中でアメリカでの生活を経験したことがあるジョン万次郎のお互いの海外に対する思想が時を経るに従って逆転してしまうのが切なかったです。

    ビジュアル的に趣向を凝らした演出が多く面白かったです。黒船がやってくるシーンの黒船の表し方が意表を突くダイナミックな方法で良かったです。アメリカ以外のイギリスやオランダなどの国が国交を求めてくるシーンが各国をカリカチュアライズしながらも、国旗の色を用いた白・赤・青のビジュアル表現が鮮烈でした。最後のシーンでは全員での歌とダンスに大掛りな美術の仕掛けや映像の効果が合わさり、物語的にも表現的にも圧倒的な力があって引き込まれました。舞台の周りに水を張ってあったのが有効に使われていなかったのがもったいなく思いました。

    ミュージカル作品に初出演の八嶋智人さん、山本太郎さんの歌はミュージカル俳優達に混じってどうなるかと少々不安だったのですが、想像以上にしっかりしていて安心して聴くことが出来ました。狂言回しの役割をになった桂米團治さんも舞台をスムーズに進行させていて良かったです。
    スタッフワークも良く出来ていると思いましたが、終盤になるまで相乗的に盛り上がって行くことが無かったのが残念に感じました。
    このキャスト・スタッフならばもっと凄いものを見せてくれそうな潜在力がありそうなのに、それが発揮されていない印象があって、もどかしかったです。

    0

    2011/06/26 01:34

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大