ヴェニスの商人 公演情報 劇団四季「ヴェニスの商人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    当代最高のシャイロック
    この作品を知ったのは小学生のころで、お芝居で観るより先に、子供向けに書かれた物語を読みました。

    男装のポーシャの機智に富んだ胸のすくようなお裁きに心を奪われたものです。

    浅利さんの演出では、評判に聞く民藝の滝沢修さんのシャイロックは残念ながら観ていません。

    レトロな雰囲気の自由劇場にはぴったりの美しい舞台美術に幕開きから見惚れてしまい、最初から最後までわくわくして観ていました。

    家族に誘われての観劇でしたが、平さんのシャイロックが観られて本当に良かった。私にとっては最高の『ヴェニスの商人』となりました。

    これぞ“磨き抜かれた名人芸”と形容するにふさわしい作品だと思います。

    ネタバレBOX

    平幹二朗という俳優さん、最初に認識したのは映画で、まだTVの「三匹の侍」に抜擢される前で、「そうだ、そうだ、庄屋さまの言うとおりだ」というセリフひとことの百姓その1で出ていた新人の頃。
    そののち役がつくようになっても東映作品では悪役か、ヒロインに嫌われる役が主で、善人役は「家光と彦三と一心太助」の柳生十兵衛役しか記憶になく、当時は主役を演じる俳優さんに出世するとは想像もしていなかった。いやはや、観客としては長いおつきあいです。

    このシャイロック役、新聞には「平幹二朗が一世一代で」と書かれていたが、役者で「一世一代」というのは、その役を演じるのがこれで最後という意味に使うのが常なので、もうシャイロックを演じるのは最後ということになるのだろうか。

    冒頭、街頭で群衆の行きかうなか、アントーニオとすれ違う時の嫌悪に満ちた一瞬の目の輝きで、シャイロックという男を印象付ける演技が素晴らしかった。

    セリフのひとつひとつが心に染み入るようで、シャイロックに焦点を当てた浅利版を鮮やかに体現されていた。


    シャイロックは、借金のかたに人の肉を1ポンド要求するようなユダヤ人の強欲な金貸しで、ゆえにポーシャに裁判で完膚なきまでに打ちのめされて、3組のカップルがめでたく結ばれるハッピ-エンドの結末に人々は喝采し、シェイクスピアもそのようにこの劇を書いたのだという。

    しかし、「ユダヤ人であるために金貸しになった」という歴史的背景を考え、シャイロックのセリフに耳を傾けるとき、シェイクスピアはユダヤ人への一抹の同情心とその悲劇をも表現しているということに浅利氏は着目した。

    「ユダヤ人だってあなたがたと同じ人間なのだ!」ということを訴えながら、裁判に負け、人々に愚弄されながら舞台を去るシャイロックの背中からあふれる悲しみが胸を打つ。

    シャイロックの悲劇の対極にある明るい恋愛劇の主役であるポーシャを演じる野村玲子の美しさも魅力的だった。


    プログラムに掲載された経済人としての浅利氏の中東問題分析やアメリカ経済との関連説明もなかなか興味深かった。

    書割にウィリアム・ターナーの絵を使用し、橋や階段を使って運河の町、ヴェニスを表現した舞台美術もシンプルな中に写実味もあって記憶に残った。

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    2011/06/25 04:39

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  • KAE様

    コメントを、どうもありがとうございました。

    平さんに実際にお会いになってるというのは素晴らく、また羨ましいですねぇ。さすが演劇のお家(笑)。
    なるほど本当にファンだと、ご本人を前に、案外、言葉が出てこないのかもしれませんね。

    また、KAEさんは「キャッツ」で大衆化する以前の四季のお芝居もたくさんご覧になり、お詳しいと思います。

    浅利さんの解釈・演出も素晴らしいけれど、俳優によってこうも素晴らしくなるのかと言う見本のような公演で堪能できました。

    ちなみに「東映の善人役では柳生十兵衛しか・・・」と書きましたが、平さんは東映の「千姫と秀頼」で大阪夏の陣の坂崎出羽守も演じていて、これは悪役ではないのですが、顔にやけどを負ったため、千姫からは疎まれ嫌い抜かれてしまう役でした。同じ役をTVでも演じられて、坂崎というと、いまだに私の中では平さんのイメージがあります。
    いまの松緑さんのおじいさんの松緑さんの「坂崎出羽守」もよかったですが、悲劇味では平さんのほうが出ていたように思います。

    坂崎も、シャイロック同様、運命にさからえず、出自のこともあり理不尽に排斥される役と言う点では共通点があるように思いました。

    2011/06/27 03:37

    きゃる様

    やはり、平さんのシャイロックは格別ですよねえ。

    私も、今回は観ていませんが、もうずいぶん昔に、拝見し、泣いた記憶があります。

    日下さんのも良かったから、浅利さんの解釈がやはり優れているのかもしれないですね。

    何年か前の映画版も良かったですけどね。

    だけど、私は、『三匹の侍」からの平さんファンでしたが、きゃるさんはそれ以前の平さんをご存知なんですねえ!
    年齢は1歳しか違わないのに、私とはご覧になってる年季が違うので、きゃるさんのコメントを拝読する度、勉強になることばかりです。

    佐久間さんと結婚された頃、一度平さんが家にいらして、あまりのことに、「ファンです」とも何とも全く言えなかった時の悔しさが今でも蘇ります。(笑い)

    2011/06/27 01:11

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