天守物語 公演情報 SPAC・静岡県舞台芸術センター「天守物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    夜の野外にふさわしい美しい舞台
    山の中にある夜の公園は、ときどきパラつく雨や、あるいは濃霧のように身体にまとわりつくような雨によって、しっとりとした色と香りをたたえていた。

    その中にある野外劇場は、物の怪たちが主人公の、この舞台にふさわしい場所であった。

    ネタバレBOX

    太鼓の音に導かれて始まる舞台は、極彩色の衣装と相まって、プリミティブな力が強く出ていた。
    それは、しっとりした森に響き、共鳴するような様だ。
    暗闇の中の、物の怪たちの姿は美しい。

    女性の肉体に男性の声、男性の肉体に女性の声を配し、異物感のぶつかり合いで、一種異様な世界と、男女の情念を描く。
    演じる者(ムーバー)と台詞を言う者(スピーカー)が異なるという、人形を人に替えた文楽のようで、朗々とした台詞も物語にマッチしている。
    さらに歌舞伎の要素も垣間見られる。

    太鼓を中心にした音楽の中に、フォークソング調のテーマ曲の入り方(重ね方)も独特であり、男女の使い方を含め、違和感とその化学反応が素晴らしい。

    役者の身体のキレがとても美しい。カタがビシビシと決まる。脇の役者を含め、隙がない。常に全体の美のバランスを保っている。

    さらに、衣装の美しいこと! それが舞台に見事に映える。
    身のこなしもいいからだろう。

    和のテイストを響かせながら、それだけにとどまらない生演奏の音楽もいい。

    すり鉢状になっている客席の通路を花道に見立てて、役者が登場し、退場するのも楽しい。劇場すべてが「舞台」になっていた。

    雨天決行ということで、観客のほとんどは雨合羽で客席にいた。てっきり舞台の上には(例えば、日比谷野音のように)屋根があるのかと思っていたら、まったくなかった。舞台裏で演奏している場所にもなさそうだった。
    屋根がないので、舞台裏の正面にある木々が美しい。

    この舞台で雨天決行ということは、雨が本降りになったとき、あの衣装でずぶ濡れになって演じるつもりだったということなのだ。
    上演時には、雨は止み、よかったと思ったのだが、自分もずぶ濡れになってもいいから本降りの雨の中で観たかったな、と勝手なことをちょっとだけ思ってみた。

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    2011/06/20 07:32

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